上田:それは、吉田さんの中でもマニアックなものを。

品田:『伝染るんです。』よりハードですよね(笑)。父親がサブカルチャー好きだったんです。コロコロコミックのような正統派のシナリオより前に「日常的なものの破壊」を学んだというか。私には離人症的なところがあって、出来事に没入せずにどこか俯瞰で見てしまう癖がある。それが一種の武器になるということを最初に見せてくれたのが吉田戦車さんでした。

■30年来のライフワーク

上田:お父さんは品田さんをどうしたかったんでしょうね(笑)。僕の構成カードにも父親の影響がありました。父は「変人に憧れている普通の人」だったんです。家に本が一冊もないような、文化的なものに縁遠い家庭だったので、あまり影響は受けていないつもりだったんですが、実は、父から「変わっていることがノーブルである」という思想を受け継いでしまったんだなと。

品田:なるほど。

上田:後から引いたカードとしては「30年、けらえいこのために漫画のネタを考え続けた」というのが大きいです。彼女も含めたいろんな人の「おもしろいところ、かわいいところ」を見逃さず記録することがライフワークになっていて。

品田:それはかなり珍しい人生ですよね。

上田:品田さんは「なりたいものがなかった」って言われていました。

品田:そうなんです。子ども時代から「何かになってやるぞ!」的な価値観をどう取り扱っていいのかわからないままここまできてしまった。

■プレッシャーに鈍感

上田:人が「何かになりたい」と強く思うのは、何かにならないと別のものに“ならされちゃう”からじゃないですか。

品田:ああ~、なるほど。

上田:何かになれないと、就職しなきゃいけなくなる。

品田:結局、それも親の影響かもしれません。父親は30歳くらいまでフリーターのような人でしたし。私も「就職できなかったらどうしよう」みたいな実利的な不安に関して非常に鈍感なところがあって。

上田:「なること」へのプレッシャーが少ないのは、たぶん愛されて育ったということでもある。ご両親は「この子は、このままで超おもしろい」って思ってたのかもしれない。

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