ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。
短期集中連載の第6回は、ソニー執行役員常務、サービスビジネスグループ長、ブランド担当の河野弘さん(60)だ。若き日に現場で「お客の目線でものを見ることの大切さ」を学び、実践してきた。2022年12月26日号の記事を紹介する。(前後編の後編)
>>前編の記事
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米国で何をやるか。河野の原点といえば、現場、そして顧客である。「お客さんに近いところからはじめたい」と申し出た。送り込まれたのは、バージニア州のリッチモンド。そこで彼は、空席だった全米第2位の家電量販店サーキット・シティとのビジネスを統括するブランチマネジャーに就いた。日本人が就くポジションではなかった。異例中の異例だった。
その後、エレキ部門本社があるサンディエゴに異動し、このままずっと米国に居ようと考えていた最中の2010年、またまた、辞令が下った。当時ソニー・コンピュータエンタテインメント社長の平井一夫から、「日本でゲームを担当してくれないか」といわれ、同年春、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)社長に就任する。ゲームの世界はこれまた未経験。ゼロからの出発である。
まず、ゲームの現場、つまりクリエイターのもとに足を運んだ。さらに、ゲームパブリッシャーとの関係にも気を配った。一方で、ゲームそのものを知らなければ話にならないと、朝7時に出社して、一人でゲームをやりまくった。
河野は現在、サービスビジネスグループ長およびブランド担当を務める。管轄は、スポーツ事業のほか、FeliCa事業や、先端技術を駆使した映像制作ソリューションなどを提供するソニーPCLの事業だ。とりわけ、六大学野球出身の彼にとって、スポーツビジネスは、うってつけだ。