気がついたら戦争に巻きこまれているということのないよう、教育費や復興予算などにあてるべき税金が知らぬ間に防衛費に使われないよう、見張らねばならない。

 マスコミの役割は大きい。財源もうやむやなまま、経済界を巻きこんだ経済効率から戦争を考えるなどとんでもない。

 もっとも冷静であるべきマスコミが、まっ先に国のお先棒をかついで、自己防衛に走るのはいかがなものか。

 かつてそれに似たことが太平洋戦争の始まりにもあった。もう一歩、人と人との話し合いや日頃からの信頼があれば避けられたこともあったのではないか。

 ここは、日本の舵取りが試される時だ!

 サッカーワールドカップ決勝戦の結果を決めたのは、アルゼンチンの監督の采配だった。

 優勝を決定したPK戦で全員が決めたのは、長い試合を見越して疲れのない選手を残しておいたから。フランスはすでに疲れ切っていた。

 長い目で何が勝利に値するか。人と人が積み上げた実績が最後に物を言うのではなかろうか。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

週刊朝日  2023年1月6-13日合併号

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?