たしかに乾燥した場所にある植物への水であればそれほど汚くないだろう。はっきりと言い切る彼に、妙に納得してしまった。同時にアメリカ人らしい合理的な考えだとも思った。
明るく話してくれたビリーさんではあるが、決して気さくなだけの人ではない。インタビューでは自分のことを次のように語っていた。
「Do you want to see your family?」(家族に会いたいですか?)
「Of course. But I have my own problem.」(もちろん。だけど、今は自分の問題に向き合う必要があるから)
「Do you feel lonely?」(寂しくないですか?)
「I feel lonely sometimes. But I cannot see them.」(寂しいよ。でも、家族と会うことはできないんだ)
PTSDが原因となって家族と距離をとったり、ひたすら心の傷に向き合い続けている彼のようなケースは決して少なくない。
表面上、どんなに気さくで明るく振る舞っている人であっても、奥底には秘めた闇があるかもしれない。彼をはじめとする地下住人たちとの出会いは、超大国として20世紀を引っ張ってきたアメリカが抱える社会問題がいかに大きなものなのか、それを突きつけてきたように思う。
(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)