今や漫画の一ジャンルとしてすっかり定着している「グルメ漫画」。毎月30冊前後の単行本が刊行されると言われており、ドラマ化や映画化などメディアミックスされることも頻繁です。いま、グルメ漫画が一大ブームであるということは間違いないでしょう。
そんなグルメ漫画ですが、いったいいつ生まれたのでしょうか。そしてどのように現在の隆盛へとたどり着いたのでしょうか? その歴史を解き明かしたのが杉村啓著『グルメ漫画50年史』です。
本書によると、グルメ漫画が誕生したのは約50年前となる1970年。祖となるのは『週刊少年ジャンプ』に掲載された『突撃ラーメン』、『なかよし』に掲載された『ケーキケーキケーキ』、『しんぶん赤旗』に掲載されている『台所剣法』の3冊だといいます。
1970年代の日本はいわゆる高度経済成長期。経済的な余裕が出てきた中で、もっとおいしいものを食べたいという需要が生まれ、さまざまなお店がオープンし、「食を楽しむ」という考え方が浸透していきました。「そういった、社会全体が『食』に興味を持った時代だからこそ、グルメ漫画が誕生したのではないでしょうか」と著者の杉村さんは分析します。日本の社会背景と合わせてみると、興味深いことがいろいろと見えてきますね。
さて、1970年代のグルメ漫画「黎明期」を経て、1980年代を「興隆期」、1990年代を「黄金期」、2000年代を「多様化の時代」、2010年代を「成熟期」とカテゴリ分けしている本書。10年ごとに区切ったその時代の代表作ともいえる作品が数多く登場します。一億総グルメブームを巻き起こした『美味しんぼ』、男性が料理を作るという流れを起こした『クッキングパパ』、料理を食べることのリアクションで美味しさを表した『ミスター味っ子』、世間知らずのお嬢様から一人前の女性へと自立していく物語『おいしい関係』、時代を超えた奇跡の名作『孤独のグルメ』など、その数150点!
「グルメ漫画は時代を映す鏡である」と常々思っていたという杉村さん。皆さんもグルメ漫画の半世紀を旅しながら、「あの有名作品はどこが画期的だったのか?」「私たちは、なぜグルメ漫画を面白いと思うのか?」といった疑問を一緒にひも解いていきましょう。読めばますますグルメ漫画を美味しく読めるようになること間違いなしです!