「I'm Gonzales.」(ゴンザレスといいます)
「I have heard that you will come.」(聞いてるよ)
自己紹介を済ませる。相手に状況も伝わっているようだ。気は抜けないが第一関門はクリアした。
「Can I walk in?」(お邪魔してもいいですか?)
「Yes.」(どうぞ)
通されたのは、変色した壁に、むき出しの電球の明かりが反射して、無造作に使用済みの食器が重ねられたキッチンに、なぜかリビングに置かれたバスタブ。どれも、突っ込みどころ満載ではあるが、部屋の中を観察している時、とっかかりになりそうなものが視界に入った。「これを使おう」そう思ってから、私は一気に切り込む作戦に出た。
「What do you want?」(何がほしいんだ?)
「Do you have marijuana?」(大麻、ありますか?)
「Of course I have it.」(もちろん、あるけど)
「I see.」(わかってます)
ここで微妙な空気が流れた。向こうは私がどんなテンションでそんなことを言ったのか測りかねている様子だった。
「Why do you think so?」(なんで、そう思うんだ?)
「I think this is it.」(だって、コレでしょ)
私は男の後ろにあるテーブルの一角を指さした。転がっている乾燥させたマリファナの塊があったからだ。最初から飛ばしすぎたかもしれない。だけど、ここで引くわけにはいかないし、少々戸惑っている相手の様子からして、そう悪い状況にあるとも思えない。そこで、強気な姿勢を崩さないまま、さらに質問を重ねた。
「Is this marijuana?」(これは大麻ですか?)
そう言いながら、再び男の後ろにあるテーブルの上を指さした。
「That's correct. This is marijuana.」(正解。これは大麻です)
「It is great!」(すげえ!)