22.2倍/テレ端600ミリの超高倍率ズームレンズ
最近のタムロンといえば大口径単焦点レンズをはじめ、高描写性の新SPレンズ群投入が続いていたが、久しぶりにお家芸ともいえる高倍率ズームの登場だ。
この18-400mm F/3.5-6.3Di II VC HLDはズーム比で22.2倍、望遠端の35ミリ判換算で約600ミリ(ニコン用)/約620ミリ(キヤノン用)相当の画角。銀塩時代には夢の焦点距離だった領域にもさほど驚かずに済むのは、同社が先駆けて発売した、モータースポーツや航空機、動物撮影などでは大人気のSP150-60mmF/5-6.3Di VC USD G2のおかげだろうが、APS-C機には望遠端がともすると少々長いのと、相応の腕力を要する。
その点では今回のコンパクトな高倍率ズームは、運動会撮影で「ウチの子だけをより大きく撮りたい!」お父さんの欲求に十分に応える実力と、場合によってはお母さんでも扱える手軽さを兼ね備えている。もちろんレンズ単体で約700グラムは決して軽くはないが、今回使ったニコンD7500ならこのくらいのほうが重量バランス的には合っている。それよりも気になったのは70~200ミリあたりのズーム操作が重く感じ、両手に余計に力を込めるぶん、フレーミングが一時的に不安定になりやすかったこと。
AF駆動には今春発売された10-24mm ズームと同じ新モーターHLDを採用し、静粛かつ高速で気持ちよく合焦する。フルタイムMFは非搭載だが、鏡胴の伸縮を考えれば当然だろう。手ブレ補正機構VCの補正効果は公称で2.5段相当と同社にしては控えめな数値である。しかし超望遠の手持ちで狙う被写体は動体が主で、被写体ブレを防ぐシャッター速度が必須のため、実用上大きな問題はないだろう。
肝心の描写は、高倍率ズームに顕著な焦点距離によってタル型から糸巻き型に変化する歪曲収差や絞り開放付近の周辺光量不足などが目につくが、事後処理できる許容範囲内。望遠側の解像力はレンズ価格を考えると撮って出しのJPEGでも十分だと感じる。1.5段ほど絞りRAW現像で追い込む手間をかけるならより満足度は高まるはずだ。
「これ一本で」という文言はありきたりすぎるが、仮に旅先でメインレンズがつぶれた緊急時にも代役を任せられる実用性とコストパフォーマンスの高さを感じる。
◆宇佐見健
●焦点距離・F値:18~400ミリ・F3.5~6.3●レンズ構成:11群16枚(ガラスモールド非球面レンズ2枚、複合非球面レンズ1枚、LDガラス3枚)●画角:75°33′~4°●最短撮影距離:0.45メートル(ライブビュー時は条件によって異なる)●最大撮影倍率:1:2.9●フィルター径:φ72ミリ●マウント:ニコン、キヤノン●大きさ・重さ:キヤノン用:φ79×123.9ミリ・710グラム、ニコン用:φ70×121.4ミリ・705グラム●価格:税別9万円(税込実売8万3700円)●URL:http://www.tamron.co.jp/