尾上菊之助(おのえきくのすけ)/ 1977年、東京生まれ。七代目尾上菊五郎の長男。96年、「弁天娘女男白浪」ほかで五代目尾上菊之助を襲名し、立役・女形として幅広い演目で活躍。古典歌舞伎のみならず、「NINAGAWA十二夜」「風の谷のナウシカ」などを手掛け、ドラマ、映画などにも多数出演。
尾上菊之助(おのえきくのすけ)/ 1977年、東京生まれ。七代目尾上菊五郎の長男。96年、「弁天娘女男白浪」ほかで五代目尾上菊之助を襲名し、立役・女形として幅広い演目で活躍。古典歌舞伎のみならず、「NINAGAWA十二夜」「風の谷のナウシカ」などを手掛け、ドラマ、映画などにも多数出演。
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 歌舞伎俳優がドラマや映画で活躍する機会が増えているが、歌舞伎を観に行く若い世代は少数派と言えよう。そんな中、SNSで話題になっていたのが、『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』(FFX歌舞伎)だ。企画・演出を手掛け、主人公ティーダ役を勤めた尾上菊之助さんに聞いた。

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 原作は世界中にファンがいるゲーム。特に2001年に発表された「ファイナルファンタジーX」は屈指の人気を誇る。尾上菊之助さんもその一人で、20年のコロナ禍でのステイホーム期間に、久々にこの作品に触れ、歌舞伎にしたいと熱望。菊之助さん本人の企画・演出・主演で、歌舞伎化が実現した。

 4月12日まで全35公演が行われ、前後編合わせて上演時間が7時間を超す大作だったが、「再現度がすごい」「歌舞伎的な表現が面白い!」と、日を追うごとに原作ゲームファンが詰めかけ、リピーターも続出した。

「お芝居のはじめに中村萬太郎さん演じる商人が観客に、『歌舞伎が初めての人』と挙手をしてもらい、歌舞伎の解説をしました。半分くらいの人が、歌舞伎観劇が初めての方。私自身、ファンの一人としてゲームの世界観を壊したくなかったので不安でしたが、ファンの方に受け入れていただき、歌舞伎にも興味を持ってくださり、出演者もどんどんテンションが上がっていきました。非常にいい雰囲気で日々進化できたので、私も毎日劇場に行くのが楽しみで仕方なかったです」

 ツイッターでは「FFX歌舞伎」に感動した人が、歌舞伎座に行った様子をツイートするなど、本公演が古典歌舞伎へのきっかけになっているのは間違いない。

「FFX歌舞伎」では、戦闘シーンでアナログ的な表現をふんだんに用いた「大立廻り」、ゲームのキャラクター「召喚獣」の勇猛さを際立たせる「毛振り」、「長唄」や「三味線」に、状況を語る「義太夫」など歌舞伎的な手法が随所にちりばめられている。ストーリーも親子の確執や登場人物の心の葛藤、他者を思う気持ちなど、古典歌舞伎の演目との共通点も多い。

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