アン・ルイス
アン・ルイス

 ただTikTokで流行している曲は、だいたいが動画の脇役としての「素材」であり「ネタ」である。

「TikTokのヒットで終わらせずに、曲を主役とした楽しみ方に広がってほしいですね。例えば、ちあきなおみの『喝采』(72年)の圧倒的にドラマチックな歌詞の構成とかね」と鈴木さん。

 たしかに昭和、平成のヒットソングには、誰にも受け入れられる懐深さと、キャッチーなサビやドラマチックな歌詞などをそなえたものが多かった。だからTikTokで使われたサビを聞いただけで、当時の思い出がよみがえる人は多い。

 ま、「昔はよかった」話は、下の世代に眉をひそめられるのがオチ。でも、週刊朝日も残すところ5号。せっかくなので知人友人に聞いて、TikTokではやっている懐かしいヒットソングの、思い出を語ろう祭りを開催したいと思う。

 フリーライターの女性(59)は軽音楽部に所属し、授業に出るより学内の防音室や部室、学食で過ごす時間のほうが長かった大学時代、組んでいたガールズバンドの卒業コンサートで、アン・ルイスの「六本木心中」(84年)を演奏した。

「イントロの弾き出しの緊張感とステージのスポットライト、某女性バンドに誘われたこともあるくらい超絶うまかったギターの子のカッコよかった姿が忘れられません」

 コピーライターの女性(62)は沢田研二の「勝手にしやがれ」(77年)を耳にするたび、ご近所さんたちと一緒にテレビを見ていたときの光景を思い出す。

「当時のジュリーは、今だと誰の感じ?と聞かれても、誰にも例えられないカッコよさ。この曲ではスーツのジュリーが歌いながら、かぶってる帽子を投げるのがお決まり。その帽子がキレイに飛んでいくのもカッコよかった。テレビを一緒に見ていた大人が『うまいこと飛ぶねえ』と言ってるのを聞いて、なぜか私がうれしかったっけ」

 この女性、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(75年)にも思い出がある。「お調子者の男子と、めんどくさい清楚系女子。中学生ながら、1番を聞いたときから、まあ、これはすぐ別れるわな、とわかってたことを友達に自慢してた」

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