いまさらながら山藤さんのスゴさに驚嘆するのと同時に、週刊誌の強みも、あらためて実感する。
新聞で毎日の連載だと、さすがに<持ってる芸のすべてを動員>する時間的な余裕が取れない回もあるだろう。一方、月刊誌での連載だと、どうしてもネタが古くなる。
だが、週刊誌なら、芸と鮮度の両立ができる。
■作家が野心を寄せる舞台
そのことにいち早く気づいていたのが、1950(昭和25)年に『新・平家物語』の連載を始めた作家・吉川英治──。
<週刊誌は作家が野心を寄せるのにおもしろい舞台になって来ました。日刊のようにあわただしくもなく、また月刊のように間が空き過ぎない。そこで週刊小説の新しい型を一つ生み出して行こうというのも唯今の私の抱負です>
連載初期に語ったその言葉どおり、吉川は<主人公は“時の流れ”>という『新・平家物語』に打ち込み、読者もその試みを熱烈に支持した。連載は1957(昭和32)年まで7年も続き、「週刊朝日」を百万部雑誌に躍進させた最大の原動力となったのだ。
連載を充実させよ、という扇谷正造の狙いはみごとに的中し、その後も連載小説は雑誌の大きな柱として、屋台骨を支えていくことになる。
『新・平家物語』以降に昭和時代の「週刊朝日」で連載された主な長編小説を、別表にまとめてみよう。
時代を昭和に限っても、百花繚乱である。あの名作も、このベストセラーも……。とりわけカラーグラビアと連動した田辺聖子や遠藤周作の作品は、週刊誌ならではの仕掛けだと言えるだろう。
ちなみに、尾崎秀樹の大著『大衆文学の歴史』の戦後篇・雑誌別索引では、文芸誌・小説誌以外では、月刊誌を含めても「週刊朝日」の登場回数がダントツである。
<作家が野心を寄せるのにおもしろい舞台>として、「週刊朝日」に箔をつけた──これもまた、国民作家・吉川英治の遺産かもしれない。