
《BEAT IT》 (guitar / EDDIE VAN HALEN)
カリフォルニア州パサディーナで結成されたヴァン・ヘイレンは、1978年にメジャー・デビューをはたしたあと、ほぼ1年に1枚のペースでアルバムを発表し、巨大化していく。そのサウンドの中心にあったのはエディ・ヴァン・ヘイレンの革新的なギター・プレイだが、広い層の音楽ファンにとっては、セックス・シンボル的なイメージをムンムンと漂わせるヴォーカリスト、デイヴ・リー・ロスの存在が大きかった。対照的に、ドラムスのアレックス・ヴァン・ヘイレンとベースのマイケル・アンソニーの二人は、ルックス、イメージともに彼らをしっかりと支える役割に徹する。その独特の雰囲気がミュージック・ビデオにも反映されてファン層を拡大し、ヴァン・ヘイレンの人気と知名度をさらに高めていった。
そして、1982年。この年の春に発表した『ダイヴァー・ダウン』からは《オー、プリティ・ウーマン》と《ダンシング・イン・ザ・ストリート》がシングル・チャートでも大きなヒットを記録しているのだが(どちらもカヴァーで、オリジナルは前者がロイ・オービソン、後者がマーヴィン・ゲイ)、ちょうどそのころエディは、大物プロデューサー、クインシー・ジョーンズからあるアーティストのためのレコーディングへの参加を依頼された。
その「あるアーティスト」とは、マイケル・ジャクソン。79年発表の『オフ・ザ・ウォール』で大きなうねりを巻き起こしたクインシーとマイケルは、それを超える、完全無欠な作品の制作に取り組んでいた。そして、マイケル自身がロックを意識して書いたものだという《ビート・イット》で、おそらく何人もの候補がいたはずだが、エディにギター・ソロを弾いてもらうという決断に達したのだった。ギター・プレイの素晴らしさはもちろんのこととして、ヴァン・ヘイレンのポップ性のようなものも大きかったのではないだろうか。