「新型コロナウイルスの感染拡大時には、感染を恐れて医療機関の受診を控える『受診控え』という動きがありました。そのため経営が悪化した病院もありましたが、当時は無担保・無利子の医療機関向け融資が実施されていました。これにより、2020年と2021年は、こうした融資に支えられて資金繰りがなんとかなっていたのです」(佐藤さん)

 病院・クリニックの上半期の倒産は、コロナ禍前の2019年には17件発生したが、2020年はコロナ関連支援策に支えられ、9件(前年同期比47.0%減)とほぼ半減。その後は増加に転じ、2024年は18件に急増。そして物価高や人件費の高騰、人手不足がさらに深刻化した2025年には前述の通り21件(同16.6%増)に達し、5年連続で前年同期を上回った。

 今期は特に、地域医療の中核となる病院の倒産が目立った。2025年上半期のクリニックの倒産は13件(同13.3%減)と減少した一方で、ベッド数20床以上の病院は8件(同166.6%増)と前年同期の2.6倍に急増し、過去15年間で最多となった。

 また、負債10億円以上が5件(前年同期1件)、従業員300人以上が2件(0件)、同50人以上300人未満が8件(同1件)とそれぞれ増加し、人口減が進む中で地域の核となる病院の苦境が鮮明となった。

「都道府県別に見ると、福岡で4件、東京で3件の病院が倒産しています。都市部に顕著な傾向かと思いきや、大阪府の倒産件数は0件でした。つまり、単純に理事長などの高齢化や、人手不足、物価高への対応ができない病院が脱落しているという可能性があるかもしれません。一方、九州全体では9件の病院が倒産しています。この調査の母数は全国で21件と少ないものの、そのうち9件が1つの地域に集中しています」(同)

 さらに、総合病院だけでなく、原宿や新宿など都内で3店舗を展開していた医療脱毛医院もこのデータに含まれている。

「『トイトイトイクリニック』を運営する医療法人社団雪焔会の倒産もありました。脱毛業界では、タレントを起用したCMなど広告宣伝費に多くの費用がかかります。また、ライバルも多い業界です」(同)

 病院の倒産の主な理由は「販売不振」が14件(構成比66.6%)で最多。次いで、「既往のしわ寄せ」が3件(同14.2%)、「他社倒産の余波」が2件(同9.5%)と続いた。

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