
ベッドサイドで患者の手を握り、「紙屋が、あなたの担当になりましたよ。今日はとってもいいお天気なんです」「私の声が届いたら手を強く握ってください」
意思疎通が難しいと思われた患者に続けるうちに、ある日ふと手を強く握り返してくれる――。そうしたことが紙屋さんらの励みとなり続けることができた、と話した。
「そうですね」「わかりますわ」
雅子さまは、うなずきながらそう話したという。
元栃木県看護協会長の河野順子さん(81)は、退院後の患者を地域で受け入れる体制を構築したことが評価され受章につながった。
「(状況によっては、)難儀なことはないですか」
雅子さまは、「退院計画」について、河野さんに尋ねた。
入院してから家へ帰るとき、迎え入れる体制がスムーズな家もあれば、周囲への負担から「入院することでホッとした」と、本人や家族が感じる家もある。
家にこだわらなくとも、施設でも本人が帰りたいと望む場所で過ごすことができないだろうか。退院したのちも穏やかに過ごしてほしい。河野さんたちは、家族や地域との関係づくりをはじめとする受け入れ体制の構築に奔走したことを、雅子さまに話した。
皇室は、相手の声に耳を傾け、思いを共感し、祝福をしてきた。相手の目をしっかりと見てうなずき、言葉を交わす雅子さま。その装いは、美しくありながらも、どこかほっとするようなあたたかみが伝わってくる。
(AERA 編集部・永井貴子)