
他人の配偶者を「奥さん」と呼んでしまう。その呼び方、正しいの? 「正解」はあるのか、言語学者に聞いてみた。
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「うちの妻がね」
夫婦で参加した飲み会で、東京都内の会社員の男性(34)が切り出した。ふむふむ、と聞いていた私に、こう尋ねてきた。
「奥さんはどうですか?」
あれ、自分の配偶者は「妻」と呼ぶのに、他人の配偶者には「奥さん」なんだ。自分は令和だけど、他人は平成のまま。私の呼び名だけ、過去に引き戻されたように感じた。
後で30代の夫にこのモヤモヤについて意見を聞いてみると、こう返ってきた。
「他人の配偶者は『奥さん』が普通では? 『妻』呼ばわりするほうが失礼なような」
きっと男性は、自分の配偶者を「奥さん」「嫁」といった主従関係を思わせる呼び方では呼びたくないのだろう。なのに、他人の配偶者には旧来の呼び方を使う。この矛盾は、データにも表れている。
文化庁の1999年調査では、女性の7割が自分の配偶者を「主人」、男性の5割が「家内」と呼んでいたが、その傾向は変わりつつある。2023年、日経ウーマノミクス・プロジェクトの調査(1584人回答)で、自分の配偶者の呼び方として最も多かったのは、女性では「夫」(51.9%)、男性では「妻」(35.6%)だった。
ところが、同じ調査で「他人の配偶者」の呼び方を尋ねると傾向は一変する。「旦那さん・旦那様」と呼ぶ人は53.5%、「奥さん・奥様」は84.7%にも上っていたのだ。
自分の配偶者は「夫」「妻」と呼ぶが、他人の配偶者には「旦那さん」「奥さん」が主流なのだ。
なぜ、他人の配偶者は「旦那さん」「奥さん」と呼びたくなるのだろうか。