
新入社員の意識にどんな変化が起きつつあるのか。
「長く成果主義が優勢だった中で今回得られた調査結果は、価値観の変化を感じさせるもので、(調査主体の)私たちも興味深く受け止めています」
こう話すのは、調査を担当した同研究所マーケティングセンターの丸山夏子さんだ。
年功序列型を望む声が成果主義を上回った背景要因について丸山さんは、「やりたいこと」よりも「働きやすさ」や「待遇面」を重視して就職先を選ぶ学生が増えていることを挙げ、こう指摘する。
「プライベートの充実を前提とし、『働く場所を合理的に選ぶ』という姿勢が、結果として年功序列や終身雇用といった既存の雇用慣行との親和性を高めている可能性も考えられます」
その上で、丸山さんは新入社員の特徴として3点を挙げる。一つは「生活設計リスクへの敏感さ」だ。
「東日本大震災やコロナ禍を児童期・青年期に経験した Z 世代は、『予測不能な環境変動』を身近に感じてきました。こうした経験は、将来の生活に対する不確実性や不安感を意識するきっかけとなり、安定した基盤を求める意識に影響を与えている可能性があります。その結果、雇用・収入の長期安定を確実に担保する制度への期待が強まったと考えられます」
もう一つは「待遇面重視へのシフト」。今回の調査で就職先の選定理由について「福利厚生」(56.4%)や「給与水準」(42.8%)などの条件面が上位を占めた一方、「職務内容」や「職種」を重視する人の割合は年々減少している。
「『職務内容』や『職種』より“働きやすさ”を優先する傾向が、年功的処遇との親和性を押し上げたと考えられます」(丸山さん)
3つ目の特徴が「挑戦よりも“長く続けられる安心”」を選択する傾向だ。調査では「会社勤めは 65 歳まで」が30.9%で、「70 代」や「生涯」を含めると45.8%が 60 歳超の就労を想定していることも浮かんだ。
「長期就業を前提にするほど、評価変動の大きい成果主義よりも年功序列への支持が高まりやすいと推察されます」(同)