設問はすべて選択式で自由記述がないため、年功序列を求める理由や背景に関する個別の声は今回の調査では吸い取れていない。ただ、数値から読み取れる“潜在的な声”はあると丸山さんは言う。
「例えば、『終身雇用を望む』が69.4%に上ったことからは『雇用の長期保証を重視』する傾向、35 歳時点での『理想年収の平均値は716万円』という結果からは『着実に上がる給与カーブを期待』する傾向がうかがえます。これらは『着実に伸びる処遇・キャリアへの安心感』を求めていると解釈できます」
年功序列志向は是正すべきなのか、それとも肯定的に受け止めるべきなのか。そう丸山さんに問うと、こんな答えが返ってきた。
「今回の調査結果は、新入社員の価値観や期待の変化を示しています。一義的に良し悪しを判断するより、『現実としての価値観変化』と捉え、企業側が戦略的に向き合うことが重要と考えます」
具体的には「多様化への適応」と「エンゲージメント向上」「コミュニケーションの再設計」が企業に求められている、と指摘する。
多様化への適応については、「安定を求める層と成果志向の層が混在する時代であることを踏まえ、双方に対応する評価制度を再設計する」ことが求められている。
エンゲージメント向上については、安定志向の一方で成長実感は求める傾向にあることを踏まえ、「安心して業務に取り組める環境と挑戦機会を両立させる仕掛けがカギ」になる。
コミュニケーションの再設計については、新入社員や若手社員の価値観の変化を踏まえ、「柔軟な働き方やコミュニケーションの仕組みの工夫を検討していくことが重要」という。
その上で丸山さんはこう強調する。
「年功序列への回帰を『意識の保守化』と見なす前に、若手が抱える将来不安をどう解消し、成長機会と安心を両立させるか。そこに、企業の若年層に対する人材戦略や人材育成のアップデートのヒントがあるのではないでしょうか」
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