全労連介護・ヘルパーネットが5月に発表した24年の「介護労働実態調査」では、介護の現場で働く正規職員の月額賃金は平均24万9585円。全産業の一般労働者の平均35万9600円との差は、約11万円だ。将来の展望が持てず、若い世代は介護の仕事を選ばない。
高齢者が非正規で働く現場国はいますぐ賃金の議論を
そんな中、20万、30万の固定給を必ずしも必要としない高齢者が非正規で、「でもやりがいを感じながら」働いている。そんな状況を「良し」として、本当にいいのだろうか。松崎さんはそう問いかける。
「高齢のヘルパーさんたちがパズルのようにシフトを埋めて、支えている。それが訪問介護の現状です。一見、大変ながらも順調に『回っている』ように見える。でも、業界として成り立っているのかと言えば『成り立ってない』という見方をきちんとすべきです」
もちろん、どんな職場でも、人手が足りなくなったら臨時で派遣社員やパートを一時的に入れる。そんなケースはあるだろう。
「でも、あくまでも『それはそれ』。業界全体が、常にその形で支えられているなど、訪問介護業界以外にないのではないかと私は思います」
早急に手を打つべきこと。それはやはり、賃金の改善だ。介護報酬上の加算を年々手厚くするなど、国には「賃金を上げなきゃ」という動きが、あるにはある。
「遅いんですよ。私は、国は11万円もの差を放置せず、『いますぐ賃金を全産業平均とぴったり合わせるべきだ』と考えています。今年1万円上げて、来年も……などという話でいいはずがない。たしかに『介護』そのものに『生産性』はない。儲けが出るわけじゃない。だったらなおのこと、労働者の賃金をただちに上げようと思えば、国の力で上げるしか方法がないはずです。早急に議論を進めてほしいと、強く思います」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2025年8月25日号より抜粋
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