自民党の麻生太郎最高顧問(写真映像部・上田泰世撮影)
自民党の麻生太郎最高顧問(写真映像部・上田泰世撮影)

「三木おろし」「森おろし」、そして「石破おろし」

 昨年の衆院選にしろ、7月の参院選にしろ、石破執行部の仕切りが良くなかったことは事実だ。しかし「政治とカネ」問題で、国民の信頼を根底から揺るがしたのは誰なのか。

 もっとも自民党ではリーダーが引きずり下ろされる時、歴史を動かす背景が存在してきた。1976年の「三木おろし」では、三木武夫元首相を総理大臣に押し上げた椎名悦三郎氏や、三木氏の政敵の田中角栄元首相が暗躍した。船田中氏や保利茂氏が中心となって結成された挙党体制確立協議会は三木氏の衆院解散権の行使を許さず、任期満了後の衆院選で三木内閣を退陣させ、福田内閣を誕生させた。

 また2001年の「森おろし」では、森喜朗元首相の「神の国発言」やえひめ丸事故の対応のまずさで内閣支持率が下落したため、参院選で勝てないと見た公明党が動き、自民党の一部もこれに呼応。判断を誤った加藤紘一元幹事長が山崎拓元幹事長を引き込んで「加藤の乱」で自滅したため、YKK(山崎・加藤・小泉)の中で最も政治権力から遠かった小泉純一郎元首相が表舞台に躍り出た。

 では「石破おろし」には、どのような布石があるのか。自民党が自滅の道を進み、民主党政権を実現させることになった麻生内閣の再来となる可能性もある。実際に佐藤勉元国対委員長や斎藤健前経産相、萩生田光一元政調会長ら5人は7月22日に会合を開き、「野党に政権を明け渡すべき」として意見が一致。佐藤氏が森山裕幹事長にその旨を申し入れている。

 そもそも麻生内閣で農林水産相だった石破首相が麻生元首相に引導を渡そうとし、今はその麻生元首相から引導を渡されようとしているとみられる。これは壮大な皮肉にほかならない。8月19日には総裁選に向けて選挙管理委員会が開かれる予定だが、自民党のみならず日本の政治史にいったい何が刻まれることになるのか。

(政治ジャーナリスト・安積明子)

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