伊吹文明元衆院議長
伊吹文明元衆院議長

「石破辞めるな!」デモに呼応? 内閣支持率は好転

 戦後80年に日本の首相でいることの責任感に加えて、自分を引きずり下ろそうとする旧派閥に対する猛烈な対抗心。それは8月15日の戦没者追悼式で「あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばなりません」と述べ、第2次安倍政権以来、歴代首相が使わなかった「反省」の言葉を使用したことでも明らかだ。石破首相が「戦後80年談話」を見送ったものの、「戦後80年見解」を出そうとしているのも、その証左にほかならない。

 そうした石破首相を後押ししたのが、7月25日夕方などに首相官邸前で展開された「石破辞めるな!」デモだったのだろう。これらに呼応するかのように、内閣支持率も好転しはじめている。

 8月2日と3日に行われたJNNの世論調査で、内閣支持率は前月比4ポイント増の36.8%で不支持率は同3.1ポイント減の60.5%となった。時事通信が8日から11日までに実施した世論調査では支持率は27.3%で前月比6.5ポイント上昇。不支持率は同5.4ポイント減の49.6%で5割を切った。なお岸田政権では2023年11月から退陣直前の2024年9月まで、不支持率が支持率を30ポイント以上も上回っていた。

 こうした数字を見ると、もし参院選が1カ月遅かったら、自公は非改選議席を含めて過半数を維持できたかもしれないとすら思えてくる。そもそも参院選での自公の敗北は、すべて石破首相の責任といえるのか。

 これについて伊吹文明元衆院議長は8月14日の読売新聞のインタビュー記事で、安易な「石破責任論」に警鐘を鳴らした。

「(参院選敗北の)第一の要因は、有権者が冷静に考えて投票する環境を自民が壊してしまったことだ。派閥の『政治とカネ』の問題や失言など、政治家としての自制や立ち振る舞いで失敗した」

 同時に総裁選については、「政治空白を避けるため、早く結論を出し、決着をつけるのが望ましい」とした。伊吹氏のこうした意見は、現在の自民党の多数派による「参院選敗北についての石破首相の責任を問うために総裁選を行うべし」との主張と似て非なるものだ。後者にはなぜ自公が負けたのかという、根本的な反省がほとんど見られない。

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