志村けんやたけし、土8戦争を語るレジェンド
コントのパートでは「土8戦争」が大きく取り上げられていた。萩本欽一、ザ・ドリフターズ、ビートたけし、明石家さんまといったレジェンド芸人らが土曜夜8時の同時間帯のコント番組でしのぎを削った時代の話である。
加藤茶と萩本欽一、いかりや長介と立川談志、志村けんとビートたけしなど、めったに共演しない組み合わせの芸人たちが、当時のことを語る貴重な過去番組の映像も多く紹介されていた。
『8時だョ!全員集合』と『オレたちひょうきん族』の裏番組同士の視聴率争いは、お笑い好きの中高年世代ならば誰もが知っている話だが、映像や証言を交えて改めて情報を整理した形のVTRとして提供されることで、見ごたえのある内容になっていた。スタジオには、その時代のテレビをリアルタイムで熱心に見てきた世代の芸人が多く、当時の思い出話で盛り上がっていた。
バラエティーのパートでは、各時代を代表する番組がリストアップされ、出演者が印象に残っている番組について語った。それぞれの話は興味深かったが、漫才やコントのパートに比べると、VTRやスタジオでの具体的な展開がなく、ややあっさりした印象もあった。
放送と笑いの関係
番組の最後には、爆笑問題が「お笑い100年史」をテーマにした新作漫才を披露した。お笑いの歴史を振り返った直後に、それを踏まえた漫才を見せるという構成であるため、彼らにとっては負担も大きかったと思われるが、完成度の高い漫才でしっかりと締めくくっていた。
100年分の歴史をたった90分の番組にまとめているため、触れられなかった芸人や番組も多かったのはやむを得ない。若い世代の視聴者にとっては、自分たちが生まれる前の話題が多く、やや距離を感じる部分もあったかもしれない。それでも、NHKらしい丁寧なリサーチと豊富なアーカイブ映像を生かし、放送と笑いの関係をわかりやすく伝える番組になっていた。
「芸人たちの放送開拓史」という副題にあるように、芸人は笑いの力でラジオ・テレビといった放送メディアを開拓してきた歴史がある。そんなメディアと笑いの不可分の関係性を、歴史・教養番組の手法で、わかりやすく面白く描くことに成功していた。NHKにはこうした手堅い番組作りを今後も期待している。(お笑い評論家・ラリー遠田)
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