桐貴さんは、舞妓が置かれた状況は「現代の奴隷」だと訴える。桐貴さん提供
桐貴さんは、舞妓が置かれた状況は「現代の奴隷」だと訴える。桐貴さん提供

――お座敷での飲酒は、置屋も罰せられるのでしょうか。 

 未成年者飲酒禁止法で、親権者や監督者に対して、20歳未満の未成年者の飲酒を知りながら制止しなかった親権者や監督者には、科料が科せられることがあります。置屋の女将は、親権者に代わって監督する立場として処罰の対象になります。

――舞妓はお客と温泉地などに行き、一緒にお風呂に入る「お風呂入り」と呼ばれる行為もあったといいます。実質的な「性接待」です。

 わいせつな行為は本人が16歳未満の場合、たとえ同意があったとしても、相手が5歳以上年長である場合は、刑法上の「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」が成立します。さらに、置屋が「お風呂入り」の事実を把握しているのであれば、犯罪を手助けしたとして「ほう助犯」の責任を問われることもあります。

安心して相談できる窓口を

――桐貴さんは、舞妓が置かれた状況は「現代の奴隷」だと訴えています。

 中学校を卒業したばかりの子どもが、労働者としての権利や自身の人権について何の教育も受けないまま置屋に入り、人権侵害を受けていることすら自覚できずに働かされています。携帯電話はお客とのトラブルを避けるという理由で所持を禁止され外部との連絡手段を断たれ、助けを求めることもできません。実際に「檻」に閉じ込められているわけではありませんが、自由を奪われた舞妓は、現代の奴隷そのものです。

――今年、岸弁護士は「舞妓と接待文化を考えるネットワーク」の呼びかけ人の一人として桐貴さんとともに声を上げました。舞妓の人権を守るにはどうすればいいのでしょう。

 舞妓は労働者である以上、まずは労働基準局が調査し、賃金未払いなどの違法行為がないか確認し、あれば置屋に対して指導や取り締まりを行うべきです。また、舞妓を「京都の文化」として発信している京都市も、その裏で人権侵害が起きていないかを把握する責任があります。舞妓が安心して相談できる窓口を設けるなど、行政として具体的な対策を講じる責務があります。

岸弁護士(本人提供)
岸弁護士(本人提供)

(AERA編集部・野村昌二)

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