
最新主演作の劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション」で、救命救急医を演じている鈴木亮平さん。医療従事者を演じた経験は、人生にどんな影響をもたらしたのか。AERA 2025年8月4日号より。
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「にこやかな顔がいいですか?」「このままでいいですか?」
カメラを向ける蜷川実花に、そう穏やかに声を掛ける。スタッフに対しても「そのレンズは相当使い込んでいるように見えますね」。場の空気やその場にいる人々の動きを見ながら、さりげなく心を配る。インタビューでも、記者の言葉に深く相槌を打ち、息を合わせようとしていることが伝わってきた。深い思考とテンポの良い会話で、常にチームの真ん中に立ってきたのだろうと想像する。
俳優として大きく花開いたのは20代後半。「食えなくてもいいから一生続ける」という気持ちで始めるも、「お仕事を頂くのもなかなか大変だった」と口にする通り、順風満帆では決してなかった。だが、いまでは「この役は鈴木亮平にしかできない」と言われる存在に。最新主演作の劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション」で演じた喜多見幸太もその一つ。テレビドラマでの反響を経て、映画化は2度目。救命救急医である喜多見は、鈴木に当て書きし生まれたキャラクターだ。「自分も喜多見のような医者になりたい」という子どもたちからの手紙も多く届くようになった。
俳優とはまったく異なる「医療従事者」という役を演じたことは、人生にどんな意味をもたらしたのか。そう改めて鈴木に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「『人を救いたい』という思い、救うことにやりがいを感じ、勉強し、リスクを冒しながらも仕事をされている医療従事者の方々は、確かに俳優とはまったく違う仕事をされているように思います」
一呼吸置いた後、こう続けた。
「ですが、我々も作品を届け、誰かの心に響き、『感動した』と言ってもらうことができる。『人を助ける』という直接的な行為ではないかもしれませんが、人のためになることをし、それを生業にする。その意味では、共通点のようなものもある気がしています」
(ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2025年8月4日号
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