
「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」の人気が止まらない。これまで以上に大学生、高校生、中学生、小学生など若い世代のファン層を新たに生み出し、“大人の”鬼滅ファンからの視線も熱い。
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今、公開されているのは「無限城編」の第1章にあたる。霞柱・時透無一郎と蛇柱・伊黒小芭内の活躍は2章以降になるものと思われるが、彼らの存在感はすでに大きい。ここで、伊黒と無一郎の関係に注目し、過去の彼らの「心の交流」について振り返る。
新刊「鬼滅月想譚 ――『鬼滅の刃』無限城戦の宿命論」を著した植朗子氏は、著書の中で、伊黒が残した無一郎への“心配”についてコラムを記している。同書から一部を抜粋変更してお届けする。
【※以下の内容には、既刊のコミックスおよび劇場版のネタバレが含まれます。】
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■多忙な鬼殺隊「柱」たち
『鬼滅の刃』には9人の「柱」が登場します。彼らは戦略の要となるのですが、鬼殺隊の中で柱に次ぐ実力者は少なく、彼らはいつもギリギリの状態で戦っています。少ない人員で広範囲を警護する必要があることから、柱は単独行動になることが多く、柱同士が共同任務にあたる機会はほとんどありません。
実際に彼らの間にはどんな交流があり、どんな感情があったのでしょうか。その手がかりが『「鬼滅の刃」公式ファンブック・鬼殺隊見聞録・弐』(集英社、2021年)の中に残されています。ここに収録されている「鬼殺隊マル秘文書・柱相関言行録」には、柱たちが互いにどんな印象を抱いているのか書かれているページがあります。
たとえば、冨岡義勇は宇髄天元に対して「自由な感じが少し羨ましい。」らしく、不死川実弥は煉獄杏寿郎に「好き。いい奴。」と、普段はなかなか口にしそうにない事柄も記されていました。
■天才少年剣士・時透無一郎と伊黒さんの心配
ファンブックに記されているのは、ちょっとした小話のような内容ばかりなのですが、その中に印象的な一文がありました。蛇柱・伊黒さんからの、最年少柱である無一郎への言葉です。
「若いので 死なないで欲しい。たまに話す。」
(伊黒小芭内から時透無一郎へ/「柱相関言行録」『鬼殺隊見聞録・弐』)
14歳という年齢に比して、常人をはるかに超える無一郎の強さは、貴重な戦力として鬼殺隊の中で重視されています。ふだん治療にあたっている胡蝶しのぶが無一郎を気にかけてはいますが、鬼との戦闘が激化する一方という過酷な環境において、無一郎は一人前の男として扱われることが多く、彼自身も周囲に弱さや甘えを見せることは一切ありませんでした。