気鋭の若手箏奏者・LEO(右)とレコーディング中のジョン。「べらぼう」の音楽には、オーケストラの基本的な楽器の他、箏をはじめ日本の伝統楽器も数多く使われている(撮影:葛西亜理沙)
気鋭の若手箏奏者・LEO(右)とレコーディング中のジョン。「べらぼう」の音楽には、オーケストラの基本的な楽器の他、箏をはじめ日本の伝統楽器も数多く使われている(撮影:葛西亜理沙)

「まずは、その音楽のスケール感です。大河ドラマは、何よりもスケール感が大事だと思っているのですが、それを補強してくれるような音楽をジョンは作ってくれるんです。あと、研究熱心なところも素晴らしいです。こちらがお渡しする大量の資料に目を通すだけではなく、自ら大学の図書館に足を運んで関連文献に当たるなど、時代背景も含めた作品理解度が、抜群に高いんです」

ジャズやロックも好き 大学ではオペラも学ぶ

 ハンガリーの伝統楽器、ツィンバロンの音色を印象的に用いた「べらぼう」のメインテーマをはじめ、箏や三味線、笛、太鼓といった日本の伝統楽器、さらにはシタールやタブラなど、本来オーケストラでは用いない楽器の音色を効果的にちりばめながら、さまざまな文化が生まれた“江戸”の華やかな雰囲気を演出するジョンの音楽。その音楽的な引き出しの数は、計り知れないものがある。彼はこれまで、どんな音楽的なキャリアを歩んできた人物なのだろうか。

 1961年、アメリカのバージニア州シャーロッツビルで、大学教員を務める両親のもとに生まれたジョンは、幼い頃から本に囲まれて育ち、ほどなく自身も本を読むことが大好きになったという。最初に興味を持ったのは、古今東西のさまざまな神話やおとぎ話。自分がまったく知らない世界を生きる人々が、ときに悩みながらも何かを決断する──そこには、どんな教訓やメッセージが込められているのだろう。そんなことを考えるのが好きな少年だった。その一方で、幼少期から音楽が大好きだった彼は8歳の頃、自分の頭の中で自分だけのメロディが鳴っていることに気づく。どうにかしてそれを形にしようと、さまざまな楽器を練習するも上手くいかない。そこで彼は、楽器を弾かなくても良い「作曲家」になることを、漠然と夢見始めるのだった。

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