恋柱・甘露寺蜜璃(画像はアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編公式サイトより)
恋柱・甘露寺蜜璃(画像はアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編公式サイトより)
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 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が18日に公開される。公開に先立つかたちで、フジテレビ系で「無限列車編」から「柱稽古編」までの内容が全7夜にわたって放送され、鬼滅ファンの間で大きな盛り上がりを見せた。

【写真】若い頃、蜜璃の「師匠」だった柱はこの人

 第四夜と第五夜に放送された「刀鍛冶の里編」では、恋柱の甘露寺蜜璃も活躍。『鬼滅の刃』の分析をライフワークにしている四天王寺大学の植朗子准教授は、新刊『鬼滅月想譚:『鬼滅の刃』無限城編の宿命論』(朝日新聞出版)の中で、蜜璃の強さの要因について言及している。同書から一部を抜粋変更してお届けする。

【※以下の内容には、コミックスのネタバレが含まれます】

*  *  *

 恋柱・甘露寺蜜璃の使う技は「恋の呼吸」。しなやかな身体、豊かな胸、隊服から見える健康的な脚。蜜璃の初登場時、おそらく『鬼滅の刃』の読者のほとんどは、彼女のことをいわゆる「お色気担当」と思ったのではないでしょうか。

 バトル系の少年マンガやファンタジーマンガでは、キャラクターたちの「異能の力」の根源を自然界のパワーと関連づけているものが数多くあります。日本であれば、古代中国の影響を受けて「木火土金水」、ヨーロッパでは四大(しだい)/四大元素/四大要素として知られる「土・火・水・気」などです。鬼殺隊の剣士たちが使う特殊な技「呼吸」も、これとよく似ています。

 鬼殺隊上位実力者の「柱」を例にとっても、岩・炎・水・風・霞・音・蟲・蛇など、さまざまなバリエーションがありました。しかし、蜜璃は「恋」です。恋って戦闘の役に立つの?……と、謎は深まるばかりでした。たとえば、炭治郎の同期の嘴平伊之助が使うのは、彼が独自に編み出した「獣(けだもの)の呼吸」ですが、他の「呼吸」と比べてみても、それほど違和感はありません。我妻善逸は「雷」、栗花落カナヲは「花」でした。蜜璃だけが異質なのです。

 けれど、物語が進んでいくにつれて、甘露寺蜜璃の強さが「心の情熱」に裏打ちされたものなのだと分かってきます。公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』(集英社、2019年)には、彼女は炎柱・煉獄杏寿郎の継子(つぐこ)であったという過去が記されています。

 かつて煉獄さんは父から鬼殺の剣士であることを否定された時、悲しい気持ちを振り切るように「そんなことで俺の情熱は無くならない! 心の炎が消えることはない!」(7巻・第55話)と決意を言葉にしていたことがありました。どんな状況でも明るい蜜璃とよく似ています。蜜璃の「恋」のパワーは、「炎」と同じく、心の中の熱い思いから生まれているようです。

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