今後の見通しについて、同研究所賃金事情編集部の伊関久美子さんは「日本経済は先行きに不透明感があるものの、全体でみれば企業業績は好調だ。次の春闘の賃上げも規定路線だとすれば、初任給も継続して上がるのではないか」とみる。

 その上で「世間の動向、同業同規模の他社、同地域の水準が初任給の決定で非常に重視される。人材確保の観点からも『引き上げは必要』との企業担当者の声がある一方で、在籍者とのバランスに苦慮されている」と指摘。さらに「今後は、賃金だけでなく就業時間や休日増といった待遇改善に加え、働きやすい制度を充実していくことで、人材確保、人材定着に努める姿勢がより明確になると思われる」としている。

 日本を代表するような大企業でも初任給を上げる動きが顕著だ。三井住友銀行は今春から大卒総合職の初任給を25万5千円から30万円の大台に引き上げた。ユニクロなどを展開するファーストリテイリングも新入社員の初任給30万円を今春から33万円にした。

 経営者の関心はいま、「どうやって若い人を採用するか」に集中している。一方、50代前後のいわゆる「就職氷河期世代」は、すでに管理職になっていると残業代がつかなくなったり、成果に応じた賃金制度に移行したりして、ほかの年代に比べて給料が上がっていないという調査結果もある。

 経営陣には世代間のギャップを埋めて、すべての年代の勤労意欲を高めて、生産性を向上させることが求められる。

(ライター浴野朝香)

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