
初夏のはずの6月から、「真夏」のような暑さが続く今年。暑くて眠れない日が続き、どうせ眠れないなら寝ないでやりたいことをやっちゃおう!という気分にもなってしまう。「眠らない」状態が続くと、ヒトはどうなるのだろうか。
およそ60年前、アメリカの高校生が自由研究(!)で断眠実験を行った記録が残っている。「眠らない」ことは、ヒトの身体にさまざまな弊害を引き起こした。睡眠研究の世界的権威で、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の機構長を務める柳沢正史教授は、監修した『今さら聞けない 睡眠の超基本』の中で、「絶対に真似してはいけない実験」としてこの自由研究について紹介している。
この自由研究は、1964年に当時17歳の高校生だったランディ・ガードナーさんが、スタンフォード大学のウィリアム・デメント教授の立ち会いのもとで行った。ガードナーさん自身が実験台となって、連続断眠にチャレンジ。「264時間」という世界記録を樹立したが、ガードナーさんにはこの264時間の間に、さまざまな変化が表れた。
はじめはテレビを観るなどしていたガードナーさんだったが、2日目には視界がぼやけてテレビを見るのが困難になり、怒りっぽくなった。3日目には吐き気を訴え、4日目からは幻覚や妄想が現れたり、物との距離感がわからなくなったりした。道路標識が人に見えたり、自分はプロスポーツ選手だと言い出したりしたという。
ランディさんは次第に会話もできなくなり、7日目にはろれつが回らなくなって、身体が震えはじめた。言葉はどんどん不明瞭になり、視力も低下。何かを記憶することもできなくなって、とうとう11日目には言葉を発することができなくなったという。
実験は12日目に終了となったが、「断眠」は、命を危険にさらす絶対に真似してはいけない行為だということがわかる。