昭和女子大学(撮影/井上有紀子)
昭和女子大学(撮影/井上有紀子)
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 かつて志願者数が「落ちるところまで落ちた」昭和女子大学が、大学単体だけでなく付属校も巻き込んだ改革を進め、20年で志願者数を4倍に伸ばす逆転劇を巻き起こした。女子大低迷の危機感の中、現状を打開する取り組みを紹介する。

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 東京・三軒茶屋の駅からほど近くにある昭和女子大学。

 キャンパスを歩くと、木陰で談笑する外国人の大学生を多数見かけた。構内にはテンプル大学のジャパンキャンパス、イギリスのインターナショナルスクールがあり、グローバルな空気が漂う。

 昭和女子大学はかつて志願者数が「どん底」にまで落ち込んだが、地道な大学改革を重ね、志願者数は約20年で4倍以上に増えた。付属中学の志願者数も急増した。アクセンチュアなど外資系企業への就職実績が生まれ、付属高校からは旧帝大の合格者も出るなど、教育の成果が出ている。ただ、ここ5年は大学の志願者数が減少して新たな壁が立ちはだかっている。

 国際学部の学部長・川畑由美教授は言う。

「2002年に受験者数が計3千人まで落ち込み、試験会場に使っていた校舎が、その年は使われなくなりました。『ここ、以前は会場だったよね』と同僚と話しました。『これはなんとかしないといけない』という危機感がありました」

女子大で実就職率全国1位

 この危機感が変革のきっかけになり、19年の志願者数は計1万4千人を超えた。ここまで志願者数を増やすことができたのは、07年に就任した坂東眞理子学長(当時)が「女性のリーダーシップ」と「キャリア教育」を掲げ、改革を進めてきたことが、卒業生千人以上の女子大で実就職率全国1位(大学通信調べ)などの実績につながったためだという。「良妻賢母」の養成が求められた時代から、総合職として活躍する女性が求められる時代へと社会が変化する流れを、大学がくみ取り、教育内容を進化させてきた。

 2学部6学科体制だったが、女性が活躍するフィールドの拡大に合わせて、社会科学、国際、経営、食、会計学と領域を広げ、定員を増やしてきた。現在は6学部15学科まで広がった。来年はデータサイエンス分野にも進出する予定だ。

 実現の背景には、徹底した学生ニーズの把握があった。アドミッション部長の松田忍教授は言う。

「全学で担任制をしいていて、私自身も1年生の担任として約50人と面談しました。学生たちがチャレンジしたいこと、不安なことなどのフィードバックは直接届きます。ここまで学生の生の声を把握している大学はなかなかないと思います」

 そして、そのニーズを総長、学長に共有する機会が頻繁にあったと川畑教授も話す。

「本学は教員間のつながりがある方だと思います。希望すれば、学長らと話す機会が、週に2日あったので、スピーディーな改革が可能になりました。学長らにもらったアイデアを、学科に持ち帰って『いや、そうじゃない』『こうすればいいんじゃないか』と話し合います」

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