
東京理科大学は昨年、新入生の女子率が3割となった。同じタイミングで始めた総合型選抜(女子)の定員は1%に過ぎないが、志願者全体への波及効果があった。各大学で女子学生の獲得競争が激化するなか、女子率が長年低かった理系大学も女子獲得に本腰を入れている。私立理系大学の雄・東京理科大学も、変化の時を迎えている。
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日本の理工系女子学生の割合は、OECD加盟国で最下位だ(2022年)。内閣府男女共同参画局によると、24年度に工学部に在籍する女子学生の割合は16.7%、理学部は28.3%。同じ理系でも男女半々の医学部や生命科学系と比べて、圧倒的に低い。20年前から低水準が続いている。
そこで、各大学で「女子枠」の導入が広がっている。東京科学大学、芝浦工業大学で既に始まっており、来年度から京都大学理工系2学部、青山学院大学理工学部などでも導入予定だ。
東京理科大学も女子学生の増加に向け、継続的な取り組みを行ってきた。
産業界からも「理系の女子を」
08年から「科学のマドンナプロジェクト」というイベントを開いて、女子に科学の面白さを伝えてきた。井手本康副学長は言う。
「当時の志願者の女子比率は19.4%でしたが、15年間努力した結果、23年には23.6%まで上がりました。入学者ベースでも、15年間で6ポイント増えました。学内の4分の1が女子学生になってきたわけです」
ただし、現在も学科によっては女子が少ない。創域理工学部電気電子情報工学科では女子率はわずか8%だ。
東京理科大学の「理科教育サークルSCOPE」に所属する創域理工学部4年の女子学生は言う。
「課題やテスト対策は、学生同士で苦手科目はお互いに教え合いますが、やっぱり同性の方が話しかけやすいです。女子が少ない学科では、同性の気の合う友人がいないと、居心地がよくないと聞きます」
大学は女子学生が安心して学べる環境整備を進めてきた。校舎の新設、改修にあたっては、パウダールームや着替えスペースを設けるなど、学生のニーズをくみ取りつつ環境づくりを進めていると、井手本副学長は言う。
「社会全体で女性の人材が求められており、政府や産業界からも『理系の女子をもっと増やして』と要望が寄せられています。大学として、女子学生をより積極的に求める姿勢を発信するために、入試改革が必要でした」