学内で、女子の存在感が高まっているという。

「やはり女子が3割いると、キャンパスの雰囲気が変わってきたと感じます。授業でも、必ず女子の姿が目に入ります。多数派である男子の意見に流されず、積極的に発言できる女子学生が目立っています。男子学生も『自分も頑張らなくちゃ』と刺激を受けているようで、お互いに高め合う状況が生まれています」(同)

 実際、創域理工学部は、学科の枠を超えてプロジェクトに取り組む「横断型コース」を選択できる。プロジェクトを引っ張る女子も目立ってきたという。

「イノベーションに繋がるような成果も含め、研究の可能性を広げるには、多様性に富んだ環境が不可欠だと考えています。女子学生の増加によって多様性が実質的に機能し、現象の捉え方や解析の視点にも、男女それぞれの特性が反映されるようになります。そうした多角的な視点の融合が、互いに良い刺激をもたらし、結果として研究環境にもプラスの効果をもたらしています」(同)

“出口”の変化も不可欠

 女子枠を用意した「その後」が重要だ。理系に女子学生が少ない理由を研究している東京大学の横山広美教授は言う。

「入学後、学内で『女子枠だから』と一括りにされると、女子学生は自信を失ってしまいます。『あなたには期待していない』という空気感が一瞬でも出てしまえば、女子は敏感に感じ取ります。それがスティグマ(烙印)となり、本人だけでなく、他の女子学生まで影響を受けてしまう可能性があります」

 結果として、修士進学など、将来のキャリアを諦めることにもつながりかねない。だからこそ、大学の受け入れ態勢が重要だ。

「女子が挙手したら積極的に発言を求め、リーダーを任せ、活躍できる舞台を用意すべきです。女子がいかに能力を発揮して、頑張っているかを教員が把握してサポートできるかにかかっています」(横山教授)

 理系の女子学生が増えるためには、“出口”である企業の変化も不可欠だと横山教授。

「大学はあくまで通過点です。企業は傍観せず、自分たちがどんな仕事をして、何を作っているのか、文理選択をする前の中学生に伝えるべきです。どんな未来が描けるのか伝わらなければ、理系を選ぶ女子学生は増えていきません」

(AERA編集部 井上有紀子)

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