自身の半生を語ってくれた桃奈さん(撮影/インベカヲリ☆)
自身の半生を語ってくれた桃奈さん(撮影/インベカヲリ☆)

母親が「太い」「丸い」と笑う

 さらに、桃奈さんには母親からも厳しい目が向けられていたという。

「母自身が、体形や人の目をとても気にするタイプで、私を見て『太い』『丸い』と言って笑ったり、『姿勢を正して歩きなさい』『これは食べなさい』『これは食べすぎ』『これは似合わない』とか言うことが多かった。私がその言葉を鵜呑みにしすぎた部分もあるけど、『母がこう思っているからそうしよう』みたいなことでずっと生きてきてしまったところはありますね」

 そうした厳しい目は、気づけば自分自身を責めるためのものになっていた。

「中学時代は陸上部に明け暮れていたから、わりと自分のことを許せていたんですよ。頑張っていれば、自分を責めることも減らせるみたいな。でも、高校へ入ったら登校できなくなって、途中から通信制に編入しました。今振り返ると、鬱状態でしたね」

痩せるために食べて吐く

 食べて吐くという行為を始めたのは、そんな高校1年生のころだった。痩せるために、喉に指を突っ込んで吐くという手段があることは、小学生のころに読んだ少女漫画で知っていた。

「真似してすぐにできたわけじゃないです。やっているうちに、いつの間にか習得してしまったんです」

 食べては吐く行為はあっという間に習慣化し、桃奈さんはSNSを使って過食嘔吐について調べ始めた。そこで知ったのが、「チューブ吐き」と呼ばれる方法だった。

チューブ吐きは地獄の入り口

「直径13mm、長さ10cmくらいのシリコンチューブをのみ込んで、ストローみたいに半分くらいまで胃に入れるんです。おなかに力を入れると、食べたものがきれいに吐ける。初めて知ったときは衝撃で、危険だし、人間って怖いなって感じたけど、それよりも『習得すれば今より痩せられる』っていう希望のほうが強かった。私は何の取り柄もなくて、生きていてもダメな存在だと思っていたから、『死んでもいいからもっと痩せたい』という気持ちで手を出してしまったんですね」

 最初は10cmまでのみ込むのも怖くて苦しかったというが、慣れてしまえば、指で吐くより体力や時間を使わず、遥かに効率的に吐くことができたという。しかし、それが地獄の入り口だった。

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