「反発をもっている住民は多いですよ。アンケートを採ると、外国籍の住民で『もっと日本人と仲良くなりたい』というのは七十数%あるのに、日本人住民で『もっと外国籍住民と仲良くなりたい』という人は十数%です。このギャップをいかに埋めるのかが課題です。防災活動訓練などで一緒に地域のために働いている姿を見せるとか、時間はかかるけれどやるしかない。多文化共生と簡単にいいますが、それが一筋縄ではいかないことは、大泉町を見てもらえればわかると思う」
メディアでは、こうした共生社会に尽力する村山の姿が紹介されることが多い。だが、彼にはもうひとつ意外な側面がある。それが、私が村山を町長として「非凡」と思うところだ。
味の素冷凍食品株式会社の関東工場は大泉町にある。創業は1970年で、日本人なら誰でも一度は食べたことがあるだろう家庭用冷凍ギョーザなどを生産している、同社の国内最大の工場である。
従業員920人のうち外国籍従業員が300人弱。国籍別ではブラジルが筆頭で、インドネシア、ベトナム、ペルー、フィリピンなど15~16カ国に及ぶ。年齢的にも30代など、中堅層にまで及んでいる。同工場総務部長兼人事グループ長の水野智子は5年前に本社からこの工場に異動してきた。彼女の目には村山がどう映っているのか。
「大泉の産業を活気づけたい、という思いが強いのかなあと思います」

票にならない人々のために 批判を受けても走り回る
町では年に1度、町に進出している大企業と地元の中小企業をマッチングさせる「企業情報交換会」というイベントを催している。
「積極的に企業同士のマッチングの機会を設けるということを、町が主体でやっておられる自治体は非常に珍しいのではないかと思います。我々みたいな大きな会社もたててくださるし、地域に根ざした企業さんとの結びつき、なにか取引ができないかすごく真剣に考えていらっしゃる。地域の中小企業さんからすれば、大企業に営業するのはなかなかハードルが高いんじゃないかなと思うんですね。しかしそういう機会で名刺交換をしていれば、なにかあればお声がけする可能性がある。実際に私どもも、急に人手が必要になったときに地元の派遣会社さんにお声がけしたことがあります」