まだ達成感はない。起業して13年余り、サービスは思っていたよりもできていない。でも、起業の精神が無くならなければ、これからも新興企業だ(写真/狩野喜彦)
まだ達成感はない。起業して13年余り、サービスは思っていたよりもできていない。でも、起業の精神が無くならなければ、これからも新興企業だ(写真/狩野喜彦)
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 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2025年6月30日号では、前号に引き続きマネーフォワード・辻庸介社長が登場し、「源流」である東京・八重洲などを訪れた。

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 起業──新しく事業を始めることだ。米国へ留学経験があるビジネスパーソンや若い層には「スタートアップ」と英語で言う方が、ぴったりするようだ。起業は、新技術を巧く活用し、新手のビジネスモデルで売り出せば、成功に至るわけではない。格別な先端技術も不要ならば、すぐに類似のビジネスが続き、先駆者利得もわずかで終わる。

 日本でもある起業の成功例には、周囲にみえなくても、トップ自ら追随者を寄せ付けない努力がある。それは成功した起業家の側で過ごせば、気づくかもしれない。辻庸介さんは、そんな幸運に巡り合った。2004年1月、27歳でソニーからマネックス証券へ出向したときだ。配属されたのはCEO室。CEOは同社の創業者の松本大社長だ。

 企業などのトップには、それぞれの歩んだ道がある。振り返れば、その歩みの始まりが、どこかにある。忘れたことはない故郷、一つになって暮らした家族、様々なことを学んだ学校、仕事とは何かを教えてくれた最初の上司、初めて訪れた外国。それらを、ここでは『源流』と呼ぶ。

 4月末、大型連休の合間にマネックス証券があった東京・八重洲を、連載の企画で一緒に訪ねた。JR東京駅に隣接したビルがあった地をみると、ここでひたすら松本社長の言動を追ったことが甦る。

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