こまめにスマホを休んでは

 まずは、脳に情報を詰め込み過ぎている状態を脱するため、こまめにスマホを休むことだ。

 一人ランチ中や赤信号で立ち止まっている間。家でトイレや布団に入るとき。電車の一部区間だけ、などできることから始めたらいいという。

 スマホを使うなら、いつも見ているニュースアプリやSNSを一度変えてみる。できるなら、短期間でいいからアプリを削除してみる。

外での居場所を作る

「外での居場所を作っておくこともとても大切です。できれば年齢や性別、職業がバラバラな人たちと話せる場があると、自分の姿が見えやすくなり、ドゥームスクローリングのような『呪い』はとけやすくなると思います」

 前出の男性も、沼から抜け出せたきっかけは、よく行く酒場だったという。「あのおっさんの話、しつこくてうざい」。「どこの学者だよ。どうせ嘘なんだろ」などとウクライナ侵攻を語っていた男性の悪口を、他の客たちがしているのを聞いたからだ。

「もうボロカスに笑われていました。話を嫌々合わせていただけだったんだと。僕が悪く言われているようにも聞こえて、初めて恥ずかしさに似た感情が湧きました」と男性は振り返る。ウクライナについて考えることは大切だと思うからニュースは今でも見るが、あさるほどではなくなり、情報とも距離を作れるようになったという。

情報の偏食がもたらすもの

 オンライン上で起きやすい“情報の偏食”。「ストレートニュースだけではなく、多くの取材調査に基づいた記事を配信するスローメディアをはじめ、異なる観点からの意見にも触れることが大切です」と森下さんは語る

 スマホの使い過ぎによる問題はドゥームスクローリングだけではない。

 脳の情報処理能力が落ちてしまう「スマホ脳疲労」の問題。

 昨年、英国のオックスフォード大学出版局は「今年の言葉」に「ブレイン・ロット(脳腐れ」を選んだ。「つまらないオンラインコンテンツの過剰消費により、精神状態や知的水準が低下すること」と定義された。

 便利なスマホによる弊害のリスクを、誰もが抱えている。

「一週間だけ、いつも見ているSNSのアプリをアンインストールしてみたらと提案すると、『絶対ムリ!』なんて言い切る方がいますが、やってみたらなんのことはなくて、なくても困らないことに気付くんですよ。ここまで頻繁に情報を追う必要はなかったと、その気づきを得るきっかけが大切だと考えています」(森下さん)

 外出が億劫になる梅雨時や猛暑の真夏。ちょっとしたデトックスを習慣づけることから始めてみたい。

(ライター・國府田英之)

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