
スマホなどで暗いニュースや情報ばかりを追い続けてしまうことを「ドゥームスクローリング」と呼ぶ。精神面への悪影響が指摘されているが、自宅でもスマホが手放せないような依存度が高い人が、自覚できないまま陥ってしまうケースが目立つという。外出が億劫になりがちな梅雨時や真夏は“危ない”季節。どんな対策が有効なのか。
【写真】まさかココまで…30代男性がドゥームスクローリングにハマった真相は
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悲惨なニュースをあさり続けた
さいたま市に住む30代の会社員男性は、2022年の春に3~4カ月ほど、スマホで戦争の悲惨なニュースをあさり続ける日々を送った。
きっかけは、その年の2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻だった。
「よく行く酒場の飲み仲間の男性で、やたらこの問題を語りだした人がいて、周りの客と議論したりしていて。僕は無知なのでまったくついていけず、恥ずかしくもあったのかな。スマホでウクライナ侵攻のニュースやSNSの情報を見るようになったんです」(男性)
独身で、もともと友人は多くはない。コロナ禍で「黙食」しつつスマホを見たり、自宅での巣ごもり生活が続く中で、スマホをだらだらといじり、SNSなどを見る癖がついてしまっていた。陰謀論に興味を持ったこともあった。それが、ロシアのウクライナ侵攻の情報あさりに置き換わった。
ロシアふざけんな、負けちまえ!
「ウクライナの女性が泣いている姿やおびえている子どもを見ているうちに、だんだんと苦しくなって。なんでこんなことが起きているんだと知りたくなって、さまざまな情報に接するようになりました。同時に『ロシアふざけんな、負けちまえ!』と憤りも感じるようになりました」
ウクライナ軍が攻勢とのニュースには心が晴れる思いがした。だから戦況の好転を期待してスマホをチェックするが、ほとんどはウクライナの悲劇的なニュースだ。気付けば通勤中も食事時もベッドでも、ウクライナの悲惨なニュースや情報を見続けるようになっていた。
「ボルシチ」についてのSNSにも怒り
ロシア料理のイメージがあるボルシチは、実はウクライナ発祥だ。そのことについて「ロシアが食文化を盗んだ」などと書かれたSNSを見た時には、怒りがこみ上げたという。
「笑われるでしょうが、なんて卑怯な国なのかと」と振り返る男性。記憶はないが、兄と会った時にもウクライナ侵攻について熱弁したことがあったらしい。
男性が「沼」に沈み切らずに抜け出せたきっかけは後述するが、なぜわざわざ悲惨な情報ばかりにハマってしまう現象が起きるのか。スマホを見続けるにしても、前向きな情報を見た方が楽しいはずだ。