[撮影:蜷川実花/hair & make up miura(JOUER)/styling 横田勝広(YKP)/costume Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)]
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 反骨心の強いロッカーのような熱量の高いパフォーマンスと風貌で魅了しながら、アイドルであること、グループであることに誰よりもこだわり、誇りを持つ。Aぇ! group末澤誠也のデビューまでの道のりは平坦なものではなかった。AERA 2025年6月23日号より。

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 本編が終わるや公演終了と退場を告げるアナウンスが流れ、会場にどよめきが走った。「Aぇ!  Group LIVE TOUR 2025 D.N.A」。アンコールを想定したライブ構成の“お約束”が覆され、放送をかき消さんとばかりに大きな「Aぇ!」コールが起こる。その声は「一糸乱れぬ」という表現が思い浮かぶほど見事に揃っていた。

「すごく誇らしいですね、ファンのみんなのことが」

 このライブの演出を担った末澤誠也は、そう語った。

「特にコロナ以降、あんなに声が出ているライブって、なかなかないと思う。だから僕の演出でも、ひとつチャレンジして。普通はアンコールに入れることの多いスタトロ(スタンド席をまわるトロッコ)とか銀テ(銀のテープを会場に降らせる演出)をもう全部、本編に入れ込んだ」

 その手法も功を奏したのだろう。ライブは終始、驚くほどの一体感に包まれていた。

「でも何より、みんながアルバムを聴いてきてくれて、盛り上げて楽しもう、っていう気持ちを持ってくれていたのが、すごくうれしかったです」

 ライブ中、もうひとつ大きなどよめきが起きた場面が、「常夜灯」への導入で、末澤が煙草をくゆらせる演出だ。

「あれは振付チームから提案があって。俺らのカラー的に王道キラキラでもないから、ありやなって。ほかのメンバーでも、って言ってたけど、イメージもあるし。佐野(晶哉)とかがやると、ファンが喜び100(%)でもなくなりそうな気がしたから、俺とかリチャ(草間リチャード敬太)やったら大丈夫じゃん?って。デビュー1年目のライブでは、珍しいと思います。何年か経って、もうみんながいい年齢になってとかやったらね、ありますけど」

 随所に、「いままでやっていない新しいことをやろう」という、“決まりごと”に飽きたらない末澤らしいスタンスが感じられるライブだった。

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