山田裕貴さん(左)と平一紘監督(hair & make up:小林純子/styling:森田晃嘉〈以上、山田さん〉/写真:写真映像部・佐藤創紀)
山田裕貴さん(左)と平一紘監督(hair & make up:小林純子/styling:森田晃嘉〈以上、山田さん〉/写真:写真映像部・佐藤創紀)
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 1945年4月、沖縄の伊江島。二人の日本兵が命からがらガジュマルの木の上に身を隠し、そこから2年もの間、二人は終戦を知らずに生き抜く──。実話に基づく映画「木の上の軍隊」が公開される。監督・脚本の平一紘さんと俳優の山田裕貴さんが語り合った。AERA 2025年6月23日号より。

【写真】木の上に身を隠し、2年間終戦を知らずに生き抜く二人

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──映画は、実際に地上戦のあった伊江島で撮影された。

平:ロケの準備中に戦没者と思われる遺骨が、地中から20人分見つかったんですよ。これは映画の現場だけど、戦争の現場なんだと実感しました。戦争の現場で戦争の映画を撮っているというのはすごく不思議な感覚で……。責任も感じました。

生きる喜びを養えたら

山田:でも戦争映画というと、なかなか見てもらえないですよね。戦争を題材にしていますが、僕はこの作品をいわゆる戦争映画ではないと思っていて。二人の男が、戦争が終わったことを知らないままどうにか生き抜こうとしている中で、自分のアイデンティティーや生きること、家族のこととか、いろんなことを考えていたので。

平:身構えてしまう気持ちは分かるんです。僕は沖縄で生まれ育ったので、小学校の頃、おじいやおばあが学校に来て沖縄戦の話をしてくれました。そのとき、話をするのはつらいだろうなあと身構えてしまう自分がいて。だからこそ、二人の人間が極限を生き抜くドラマでありつつ、エンターテインメントとしてどう見せるかは考えて撮りました。

山田:日本は今、戦争もなくて安全な状態ではありますけど、そんな中でも自分で自分の命を絶ってしまう若者がたくさんいて、まず生きていることの喜びを感じる心を養えたらいいなと思っていて。この映画は「やっぱり生きるということが大事なんだ」というパワーをあげられると僕は思うんです。だから、本当にこの映画を見てほしい。たくさんのメッセージがあるので。

平:そうですね。水を飲んだり、ちょっとしたものを食べたりする、そんな小さな喜びを積み重ねることが明日につながり、生きていくことにつながる。それがこの映画では体現できたかなと思いますし、沖縄戦の話としても、これまでとは変わった立ち位置で、沖縄の人にも、県外の人にも届くんじゃないでしょうか。

(構成/編集部・大川恵実)

死への恐怖よりも、生き抜くという思いの方が強かったんだと思う(山田さん・左)/小さな喜びを積み重ねることが生きていくことにつながる(平監督)(写真:写真映像部・佐藤創紀)
死への恐怖よりも、生き抜くという思いの方が強かったんだと思う(山田さん・左)/小さな喜びを積み重ねることが生きていくことにつながる(平監督)(写真:写真映像部・佐藤創紀)

AERA 2025年6月23日号より抜粋

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