
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年6月23日号には富士高圧プロダクツ 代表取締役社長 東田文太郎さんが登場した。
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履きだおれの街と呼ばれる神戸・長田地区で、婦人靴ブランドにアウトソールとインソールのラバー素材を提供する、靴底用ゴム資材メーカー「富士高圧」の3代目として23歳で家業を継いだ。
27年後、日本の草鞋(わらじ)から着想を得た、自然に足指を駆使する歩き方に導くサンダル、buntA「waraji sandal」をオリジナルラバーで開発、販売。2024年度のグッドデザイン賞を受賞した。
それまでの道のりは長かった。一流企業に就職するも、下り坂の家業を継いだ。ゴムの配合についての知識はほぼゼロ。独学で勉強を続け、独自の配合で様々な素材の開発を続けた。同時に、古くなった機械を買い替える費用を稼ぐため飲食店を始めた。二足の草鞋で仕事を続けたことが、発想の糧ともなった。
30代半ばから世界中の同業ゴムメーカーを見て回った。そこで、独立気泡発泡ラバーを世界に先駆けて生み出したのは、神戸・長田地区のゴム会社であるということ、その発泡ラバーでビーチサンダルを作り、今や世界中で履かれていることに感銘を受けた。
靴の欧米化が進み、足指を使わない歩き方をする日本人が増える中、草鞋や下駄が主流だった時代の歩き方をインソールで復活させたいと、本腰をいれた。
「足指を使用して歩くということは自らで足裏にアーチをつくり、運動連鎖で子どもの足育、高齢者の健康寿命をのばすことにも繋がります」
合成ゴムと合成樹脂を基本に様々な素材を配合し、低反発(衝撃吸収)と高反発という、相反する二つの機能を併せ持った“歩行専用ラバー”マシュマロ(R)ラバーを開発。医療用インソール mysole(R)も好評で、13年に医療用装具会社、神戸装具製作所を立ち上げる。
20年に、インソールをアシストするマシュマロ(R)ラバーをドッキングさせ創り上げたのが、草鞋の形をした「waraji sandal」だ。現在ゆっくりと浸透し売り上げも右肩上がりだ。
「足元から全身への健康に」をモットーに、これからも日本のものづくりの素晴らしさを国内外に伝えていく。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2025年6月23日号
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