求められる面白さの違い
これらの番組を見ていて感じるのは、地上波とBSでは求められている面白さの質が違うということだ。地上波では多くの視聴者に伝わるような王道の派手でわかりやすい番組が求められる。
でも、BSでは地味でゆったりしたものに価値が宿る。BSは視聴者の年齢層も高い。その世代の人は、演出が派手な地上波の番組に煩わしさを感じていたりする。そういう人には、自分の趣味に合ったのんびりした雰囲気が必要とされている。中年芸人が出演するBSの番組は、まさにその需要を満たしている。
一方、制作サイドの視点から見れば、BSに出ている中年芸人はプロ中のプロとして信頼できる存在である。スタッフとのコミュニケーションもスムーズで、現場を回すスキルも高く、肩肘張らないリラックスした雰囲気で面白い番組を成立させることができる。予算に制約がある中で、安定してクオリティの高い番組を作るためには、中年芸人の長年鍛えてきた技術が重要なのだ。
BSというメディアは、地上波に比べて視聴率至上主義の色が薄く、制作の自由度が高い。大規模な予算もなく、高い視聴率を期待されるわけでもない。その代わり、企画も出演者も「自然体」であることが求められる。地上波の過酷な生存競争を勝ち抜いてきて、笑いのスキルだけではなく人柄の魅力も伝えられるようになった中年芸人にとって、BSは居心地の良い理想郷のような場所なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)
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