朝早く店頭に並び、政府備蓄米を買い求める人=米倉昭仁撮影

古い米に発生「古米臭」

 収穫から時間が経った米に、いったい何が起こるのか。

 実は古い米は、「古米臭」と呼ばれる独特のニオイがすることがある。炊いても硬く、舌ざわりがパサついたり、逆にべちょべちょになったりする。米が古くなると、米に含まれる水分の含有量が減るからだ。

 備蓄米も含めて、通常、米は玄米の状態で室温14度、湿度73%の低温倉庫で保管される。入庫の時点で新米の水分は14~15.9%に調整されるが、保管中に徐々に抜けていく。

 保管中に、米の粒は少しずつ擦れ合い、表面の『ぬか層』に傷ができる。傷が空気に触れると、ぬか層の脂質が酸化分解される。雑菌やカビの胞子がついて繁殖することもある。これらが古米臭の原因だという。

水分が少ない古米

 精米するなどして玄米のぬか層を削ると、いわゆる「白米」になる。ぬか層をきれいに削り取れば古米臭は軽減されるが、完全に消すのはなかなか難しいという。

「新米と同様の力加減でぬか層を削り取ろうとしても、古米は水分が少ないので割れてしまいます。圧力を下げて精米することになりますが、わずかにぬか層が残ってしまう可能性がある」

 輸送環境の問題もある。低温倉庫で保管された米はトラックで運ばれるが、その際、温度差で結露が生じる。

「これから夏場にかけて気温が上がりますから、結露しやすくなります」

 水分の減った古米は結露した水を吸いやすい。水と一緒に米粒のまわりのぬか臭や古米臭も米の中に取り込んでしまう。

米穀・米飯指導者を養成する「五ツ星お米マイスターProf.」の資格を持つ牧野基明さん=米倉昭仁撮影

「米をしっかり研ぐ」はNG

 牧野さんは米穀・米飯指導者を養成する「五ツ星お米マイスターProf.」の資格を持つ。

 古米でも特徴を知り、炊き方などに工夫すれば、「多少なりともおいしく食べることができる」という。

「米をしっかり研ぐことか」と、牧野さんに尋ねると、「全く逆です」という。

 ぬか臭や古米臭をとろうとして力を入れて古米を研ぐと、米粒が割れ、流れ出した汚れや悪臭の成分を吸ってしまう。割れた米を炊くと、べちょべちょのごはんになる。想像しただけで最悪だ。

牧野基明さんの店では玄米をその場で精米して販売している=米倉昭仁撮影

まずは水を吸わせる

 牧野さんが勧める古米の炊き方は次の通りだ。

 あらかじめボウルに水をためておき、そこに米を静かに入れる。

「米の汚れや米ぬかで水を濁らせないで、米にきれいな水だけを吸わせることがポイントです」

 そのまま30分ほど置いて、上澄みの水を捨てて、米を「研ぐ」というより、やさしい力加減で「洗う」感覚で洗米する。この過程で水が濁っても、米は十分に吸水しているので、汚れなどが溶け出した水をほとんど吸わずに済む。この洗いとすすぎの作業を手早く2、3回繰り返す。

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