役員になる前から気になっていたのが、管理費を滞納している住民の存在。管理費の滞納者がいることは、それまでも総会資料や広報誌で報告はされてはいた。それが、役員になって内部資料に目を通すことができたことで、10年以上にわたり少し払っては払わなくなりを繰り返し、30万円近く滞納している住人がいることを知った。
管理会社もこの住人を放置していたわけではない。督促状を送り、面談もしていた。ただ、役員は1年で交代するため、のらりくらりと滞納を繰り返す住人を結局は見逃していたようだった。しかし、それは歴代の役員の怠慢でもあると考えた女性は、絶対に自分の代で解決すると決めた。
滞納者に返済や売却の助言をできればと考え、対面での話し合いを持ち掛けても拒まれた。あまりの確信犯ぶりに、最後は管理会社から弁護士を通して「返済しなければ裁判だ」と通知したところ、滞納者はあっさり全額を支払った。
日本社会の縮図
「こうしたことを実行できたのは、管理会社との協力体制もある役員の立場だったからです」
そして役員を経験したことで、当事者意識が強まったと女性は話す。
「暮らしているマンションに自分が関わっているという実感です。役員をやったことで、自分の住まいのことは人任せではいけない、すべては無理でも、何が起きているか把握することの必要性を感じるようになりました」
高齢化、無関心、責任の押しつけ合い――。マンション管理は日本社会の縮図のようだ。誰かが動かなければ何も変わらない。「自分の番」に向き合う意味は、そこにある。
(編集部・野村昌二)
