アメリカで話題になっているバイデン前大統領の内幕本『ORIGINAL SIN(原罪)』(写真:AFP/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

 アメリカのバイデン前大統領は就任時に認知機能が低下していた——。そんな内幕本がアメリカで話題となっている。共著者の一人でCNNキャスターのジェイク・タッパー氏が取材に応じ、側近たちの「罪」と、出版の真のねらいについて語った。

【写真】息子の命日に妻のジル・バイデン氏とともに教会のミサに出席するバイデン前米大統領

*  *  *

「彼らはメディアだけではなく、国民にも他の民主党員にも、献金者にも閣僚にも民主党議員にも嘘をついていたのです」

 こう語るのは、今アメリカでthe talk of the town(もちきりの話題)になっている『Original Sin: President Biden’s decline, Its Cover-Up’ and His Disastrous Choice to Run Again(原罪:バイデン大統領の認知機能低下とその隠蔽、そして再び出馬するという悲惨な選択)』の著者の一人ジェイク・タッパー氏だ。「彼ら」というのは、ホワイトハウス側近のことである。5月20日にアメリカで発売された本書は、CNNキャスターのタッパーとオンラインニュースで最も定評があるアクシオスのホワイトハウス担当記者アレックス・トンプソンによる共著で、今全米に旋風を巻き起こしている。

 筆者だけではなく、世界中の誰もが昨年6月27日に行われた大統領選討論会で、討論が始まってすぐに、バイデン前大統領が、思考が途切れて言葉が出てこなくなり、挙句の果て、まったく意味をなさない“medicare”と発したシーンを覚えているだろう。その討論会のモデレーターを務めた男性がタッパーである。

「私の前にはコントロールルームとコミュニケーションを取るために、iPadが置いてあったのですが、バイデンが“medicare”と発した瞬間“Holy smokes!”(まじかよ!)と書き込んでしまいました。隣に立っていたもう一人のモデレーター、ダナ・バッシュは、“He just lost the election.” (この瞬間バイデンは選挙に負けた)と書いたメモを私に渡しました」

 バイデンがその瞬間選挙に敗北したことは誰の目にも明らかだったが、タッパーはさらにこう続ける。「正直に言えば、討論会の舞台で目の当たりにした認知機能が衰えたバイデンは、舞台裏でホワイトハウス側近がよく見ていた人物とそれほど変わらなかったということです」

 筆者はインサイダーの一人からバイデンの著しい認知機能の低下のことを聞いていたので、いずれ化けの皮がはがれると思っていたが、それがまさにこの討論会であった。本来なら翌日大統領選から撤退するべきだったが、それから当時副大統領だったカマラ・ハリスにバトンタッチするまでの3週間、民主党内は大混乱に陥った。ハリスは自分から手を挙げることはなかった。「もしハリスが自分から手を挙げていれば、自分がバイデンを追い出したという印象を国民に与えてしまうからです」(タッパー)

次のページ 象徴的なジョージ・クルーニーにまつわるエピソード