大阪市の横山英幸市長
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 全国の高速道路で「逆走」が問題になっている中、大阪・関西万博の会場へのアクセス道路でも約2キロにわたって「逆走」が発生していたことがわかった。一歩間違えば大事故につながりかねなかった事態なのに、管轄する大阪市建設局はこのトラブルを公表していない。

【写真】大阪市が関係者に送った「逆走」の通知

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「まさに危機一髪だったと思います」

 こう話すのは、大阪のタクシードライバーAさん。Aさんは万博会場へのアクセス道路でタクシーの逆走が起きたことを知り、「よく事故にならなかったものです」と話す。

阪神高速の仮オープン部分で起きた「逆走」

 逆走があったのは、新大阪駅周辺と大阪・関西万博の会場とをつなぐアクセス道路。建設中の阪神高速「淀川左岸線(2期)」が万博に合わせて仮オープンし、豊崎インターチェンジ(大阪市北区)から海老江ジャンクション(大阪市福島区)まで、片側1車線の約4.4キロがアクセス道路として使われている。海老江JCからはすでに供用されている阪神高速をへて、夢洲の万博会場につながる。豊崎ICはJR新大阪駅に近く、駅と万博会場を結ぶシャトルバスも運行されている。

 仮オープンした区間は万博のアクセス専用で、バスやタクシー、工事関係車両、緊急車両など、事前に許可を受けた車両だけが通行可能だ。完成すれば阪神高速道路の管轄となるが、万博開催に合わせて暫定的に利用されているため、現在は大阪市建設局が管理している。

 関係者によると、「危機一髪」の逆走が起きたのは5月23日の正午前だった。

 豊崎ICからアクセス道路に入ったタクシーが、万博会場に向かって走行中、中央分離帯の欠けた部分から反対車線に入った。交通量が少なかったこともあってか、タクシーは約2キロを逆走。そこで正面から走って来たバスと鉢合わせになった。だが、バスが急停車したため事故に至らず、逆走したタクシーはまた中央分離帯の欠けた部分から元の車線に戻ったという。

 この逆走を把握した市建設局は、同日午後、タクシー業界などの関係者にこんな通知を出している。

〈本日、非常に危険な通行が確認されましたので緊急としてご連絡をさせていただきます。至急、ドライバーの方に注意喚起を促すようにお願いいたします。今回の事案は決して看過できるようなものではありません〉

 通知の緊迫した表現からも、一歩間違えば大事故につながりかねなかった事態だったことがわかる。

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