これからのマーケティングにかかわる人に必要な資質とは

バイロン・シャープ氏の「エビデンスに基づくマーケティング」は日本でもかなり定着してきていますが、徹底的に事実に基づいてマーケティングを分析しているところが、彼の著書が人気の理由ではないでしょうか。
エビデンスや根拠が大事という考え方自体は昔からありましたが、彼が提唱した「メンタルアベイラビリティ」や「フィジカルアベイラビリティ」という言葉も、だいぶ日本で浸透してきた印象です。
メディア、コンプライアンスなど、この20〜30年でマーケティングを取り巻く環境は大きく変わりましたよね。また、マーケティングにはもともと正解がないのに、毎年新しいマーケティング関連の言葉やコンセプトが生まれているし、SDGsなどさまざまな要素が次々と現れて、私自身も含めて、どうしたらいいか自信がないんだと思います。だから、「エビデンスがあるものを、まずは、やりましょう」となるのは自然な流れではないでしょうか。
マネジメントの観点では、会社はマーケティング施策の成功確率を上げていかなければなりません。そのためには科学的に根拠のあることをやったほうがいいし、当たり前ですけどそのほうが組織の中で合意を得やすいですよね。
『マーケティングの科学』でバイロン・シャープがマーケターの資質について触れていますが、私はマーケターのキャリアには、2つしか方向性がないと思っています。ある分野の専門家になっていくか、全体を見るマネジメント層になっていくか、です。
マーケティングというものは本だけを読んでも上手にはなりません。それはスポーツと一緒で、知識を備えるだけではなく、試合に出ないとレベルが上がってないですよね。なので、マーケターの方々は早く成長したいなら、たくさんの実戦に出ることができて、かつ高いレベルで仕事ができるところで仕事をしたほうが良いです。ひとつの大きなプロジェクトを何年もかけてするような仕事はもちろん立派ですが、試合数という観点では少ないですよね。
よく「経験を積みたい」という表現をする人がいますが、経験は「やったかどうか」ではなくて「実績を出したかどうか」なんですよね。かつ、「この分野で自分に勝てる人はいない」と言い切れるぐらいのものにならないと、他の会社に行ってもあまり意味がないんです。
またそもそも、やったことがあるだけで、そこで実績が出なかった人は採用されません(笑)。「経験を積む」という言葉が、「大した実績を出さなくても、転職したら、自分の価値が上がる」という、間違った「逃げ」の言葉になってしまっているということですね。
企業が求めているのはたくさん経験をした人ではなく、たくさん実績を出した人なんですよ。まわりが見てわかる、実績という結果です。特に若い世代のマーケターの方々には、そのようなスタンスで仕事をしていってほしいと思います。
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