困った時に頼る、マーケティングの事典として

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「B to Bの書籍が少ないなか、B to Bの示唆がたくさん入っているのはとても貴重」と語る足立氏

 マーケターは『マーケティングの科学』の1章「マーケターに求められる資質と仕事」、2章「消費者行動と顧客行動」、3章「指標の重要性」は絶対に読んだほうがいいと思っています。特に2章は『ブランディングの科学』など、バイロン・シャープ氏の理論の重要なところがコンパクトにまとめられています。

 3章で指標の重要性が取り上げられているのは、他の本では見受けられないのでうれしかったですね。「何を指標とするのか、どのくらいのレベルをめざすのか」という点は、私はとても重要だと考えているので。

 その他の章は、自分の職種に関係あるところだけ読めばいいと思います(笑)。たとえば会社の上層部の方だったら、5章の「マーケティング環境」と15章の「倫理と社会的責任」ですね。メディアを担当されている方は当然、11章の「広告」と12章の「メディアプラニング」とかですね。

 原著が2017年発行なので、たとえばSNS関連の話などは少し古く感じるかもしれません。ただ、マーケティングに及ぼす影響という意味では、アルゴリズムやメディアが違うだけで、基本的にはそれほど変わらないと思います。そもそも原理・原則を学ぶものですから、最新の事例である必要はないのではないでしょうか。

 私には、マーケティングの事典みたいな本が4冊あるんです。それは、『コトラー&ケラー&チェルネフ マーケティング・マネジメント』(丸善出版)、『マーケティング戦略論:ノースウェスタン大学大学院ケロッグ・スクール』(ダイヤモンド社)、自著でもある『世界的優良企業の実例に学ぶ 「あなたの知らない」マーケティング大原則』(朝日新聞出版)、そして『グロービスMBAマーケティング』(ダイヤモンド社)です。

 常に横に置いて、何かあった時に参照する本という意味の事典ですね。そういう点ではこの『マーケティングの科学』は、5冊目にラインナップされると思いました。
 

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