そして、今回、マクロン仏大統領が、「今日の主なリスクは2つの超大国間の分断であり、(米中が)他国に対してこちら側を選べと指示してくることだ」「いずれかを選べば、世界の秩序を壊すことになる」と、まさに東南アジア諸国と同じ姿勢を示したのである。他の欧州諸国にも、仮に明言はしなくとも大きな変化が起きているのは間違いない。ASEANに限らず、グローバルサウスの多くの国が、中立の立場を表明している。

 今後、日本の日米同盟に対する姿勢はどうなるのか。 

戦後初?米国離れが政策議論の土俵に

 ウクライナ戦争に対するトランプ政権の姿勢、また、トランプ氏が繰り返し日米同盟への不満を口にすることを受けて、日本の言論状況も変化しつつある。

 4月に行われた世論調査では、「日本外交は米国の意向にどう対応?」との問いに、「なるべく自立した方がよい(68%)」が「なるべく従った方がよい(24%)」を大きく引き離した。また、「いざという場合、米国は本気で日本を守ってくれるか?」との質問に対し、「そうは思わない(77%)」が「本気で守ってくれる(15%)」の5倍以上の回答となった(朝日新聞世論調査 2025年4月27日online掲載)。これまで日米同盟に疑問を呈することのなかった親米保守派にも「アメリカとの関係を一度見直さなければならない」と発言する人が出てきている。

 もっとも、日本政府は、米国に守ってもらわなければならないと必死に米国を引き留めようとしており、いわゆる「抱きつき戦略」に出ている(選択肢A)。既にアメリカの要求である米軍駐留経費の増加を検討し始め、今後も、防衛予算のさらなる増加や米国製兵器の大量購入、また経済的な譲歩も含め、米国の要求を可能な限り聞き入れていくだろう。より自発的に対米従属する姿勢がこれまで以上に強化されていくのは目に見えている。

 しかし、どれだけ日本が米国に「尽くして」もトランプ氏率いる米国が日本を防衛するとは限らず、この日本政府の戦略で米国から「見返り」がくる保証はない。

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