昨年夏の対応が問題だったという指摘もある。23年産のコメが問題で、統計では平年並みだったが、一等米比率が極端に少なく品質が悪かった。「スーパーの店頭に並んでいるコメが少なくなっていたのは十分にあり得る。それが根っこにあって、昨年夏ぐらいからコメが足りなくなるといわれた。そこから準備して備蓄米を放出すれば問題なかった」と話す専門家もいる。
備蓄米以外のコメも下がるか
今後はどうなるのか。程度の差はあるものの、備蓄米の価格は一定の額は下がるだろう、という見方で専門家も一致する。ただ、備蓄米以外のコメは、少なくとも26年産まで下がらないのではないか、との見方が強い。現在コメの平均価格は5キロで4200円程度。石破首相は平均3千円台にしたいと訴えている。
コメの集荷業者は早めにコメを確保したいために25年産のコメの買取価格を昨年より大幅に増やす方向だ。JA全農にいがた(新潟市)は25年産コシヒカリの目標を60キロあたり2万6千円以上とする方針だ。24年産当初より5割高い。全国でこういう傾向で民間の商取引に、政府が介入することは難しい。
24年産も、コメ業者はすでに高いお金で買っており、安く売ると損が出る。
政府としては備蓄米を使ってコメ全体の価格を下げるために最大限の努力を続けることになる。「今に全てを注ぎ込み、参院選後のことは考えていない」と農水省関係者は話す。この秋は、コメが余る恐れもある。コメは保存できるため、生鮮食料品よりは値崩れもしにくく値が下がるかはわからない。
進次郎氏は、21日の大臣就任会見で27年産のコメの生産体制に向けて抜本的な改革の意向も示した。ただ、参院選後も農水相を続けるかはわからない。27年は次の衆院選挙も近くなり、抜本的なコメ制度改革は雲散霧消となる可能性もある。
(元朝日新聞編集委員 小山田研慈)
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