
「小泉バズーカ」は効くのか。6月初めに備蓄米を5キロ2千円で店頭に並べたいとぶち上げた小泉進次郎・新農林水産相。政府の備蓄米を随意契約で小売りに直接販売し、足りなければ無制限に放出するという。5月21日の就任後は連日メディアに登場し、怒涛のようにメッセージを出し続ける。なりふり構わぬ姿勢は、官邸の命をうけ、デフレ脱却のために異次元の金融緩和策を打ち出し続けた「黒田バズーカ」を彷彿させる。7月の参院選までに結果を出すために、背水の陣で臨む。
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「小泉進次郎です。お元気ですか? また(あなたの)出番がやってきましたよ」
その電話は20日午後に突然かかってきた。驚きながら「ご本人ですか? 出番って?」と聞き返すと「コメですよ、コメ。これを何とかしないと。いくらなんでも今は高すぎますよね。(国民の)コメ離れが起きてしまうでしょう」。
かつて農業や農協問題を取材していた筆者に、強い口調でこう話しかけてきた。
「なんで農業の取材をやめたんですか? 全農(の取材)もやったでしょう」とたたみかけてきた。慌てながら簡単に説明した。
同日午前、経営再建中の日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長が進次郎氏と面会したというニュースが流れた。
筆者は、その確認のために進次郎氏の事務所に連絡した。確認事項をメールしてほしいといわれた。ついでに進次郎氏が自民党農林部会長時代に、筆者が取材していたことも書き込んだ。3時間後に進次郎氏本人から電話がかかってきたのだ。
日産の件で問い合わせをしたのに、いきなりコメ問題を持ち出してきたのが意外だった。 その日の夜に、進次郎氏が農水相に就任とのニュースが流れ、さらに驚いた。
関係者に聞くと、進次郎氏は農水相就任の前から、コメ問題を何とかしないと、とたびたび周辺に話していたようだ。政権や参院選などをにらんで、コメが重要なテーマになると思ったのだろう。
いま思えば、日産の件で問い合わせをしたとき、進次郎事務所の対応が予想外に良かった。確認したい点があれば、進次郎氏に確認すると秘書が言ってきた。日産への対応でも注目を集めた進次郎氏は、自身にプラスになる発信をとても意識しているな、と感じた。そうでなければ、番記者でもない人間に直接電話してこないはずだ。