北川被告が女性検事に渡した直筆の手紙

「特定の女性をひいきする人事があった」

 大阪地検に在籍したことがある元検事の弁護士は、北川被告の手紙を読んでこう語った。

「北川被告が検事時代から部下の女性などと極めて親密だという話は何度も聞いた。立場を使い、特定の女性職員をひいきするように人事を動かしているとの話もあった。公開された手紙を見てやっぱりなと思った。あきれるばかりだ」

「検察は私の口をふさごうとした」

 会見で女性検事は、時折ハンカチで涙をぬぐいながら、こう話した。

「北川被告は口止めのためか賠償金として1000万円を渡してきたが、全額突き返した。示談などしていない。処罰すべき犯罪者は処罰しないといけないと、勇気を振り絞って被害を訴えました。私はPTSDの病状が悪化し、病休に追い込まれ、生き甲斐だった検事の職まで失いかけている」

 そして、北川被告だけでなく、検察組織の問題だと訴えた。

「検察は個人の問題だと矮小化し、再発防止策を講じませんでした。組織の問題を告発した私の口をふさごうとしました。組織を守ろうという誤った組織防衛の意識が働いたと思わざるを得ません」

 会見後、女性検事に個別に話を聞くと、北川被告から手紙を渡された経緯について、こう話した。

「検事の仕事中、北川被告に決裁を取りに行った時に、北川被告は口止めしようと圧力をかけてきた。仕事のときはやめてくれと抗議すると、その結果、最後に秘書を通じて、公表した手紙を渡してきました。加害者と会うのは本当に苦痛でした」

 北川被告が自ら手紙に記していたように、この事件は個人の犯罪から、「検察組織」の大スキャンダルになっている。

(編集部・今西憲之)

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