
農水相抜擢は「ご神木」のおかげ?
「夏の参院選まで2カ月ですが、それまでに結果を出すのは相当難しいと思います。先ほど言ったように、コメというのは極めてセンシティブな作物なので、価格のコントールをするのは至難のわざです。日本の約5600万世帯が1キロずつ多くコメを買い込むだけで膨大な量になります。そこに業者の買い占めなどが加わると、確実にコメの流通量は不足し価格は下がりません。コメ専門問屋の存在もある。だから、コメの問題は農協改革だけで簡単に片づく問題ではない。さらに政治家が加わり魑魅魍魎の世界になるわけです」(同)
結局、一番のシワ寄せを受けるのは消費者と農家になる。
「農家としては、『自分たちは安く出しているのに高く売りやがって』という不満が残る。進次郎が2カ月で結果を出そうと功を焦れば焦るほど、参院選で農家の票を失う可能性があります。農家は地方の大きな票田なので、地方の1人区はやっぱり自民党が強いんですよ。これを機に農家が自民党にお灸を据えてやろうという流れになると、自民党は本当にまずい事態に陥りますよ」(同)
逆に、もし進次郎氏が手腕を発揮してコメの価格を下げることに成功すれば、政治家としての「先」が見えてくる。政治ジャーナリストはこう話す。
「石破さんはこれで小泉さんにものすごく大きな借りをつくることになる。石破さんには党内で友達がおらず、手駒がいない。もし石破さんが辞めさせられるような局面になれば『じゃあ、次は小泉さんに』という流れになる可能性もあります」(同)
現在は都内在住の進次郎氏だが、最近はしばしば地元の横須賀に帰っている。直近では、5月17日の土曜日に、横須賀市にある「大津諏訪神社」の創建1200年を記念した「御柱祭(おんばしらさい)」に参加していた。地元の後援会関係者はそのときの様子をこう話す。
「あいにくの大雨で、嵐の中で祭りになりましたが、進次郎さんははっぴを着て参加していました。上機嫌で『このはっぴは日本に数枚しかない珍しいもの』『今日は(この後)晴れると思います』などと発言していました。ちょうどその翌日に江藤氏の失言があったのですが、進次郎さんはその4日後に農水相への起用が決まり、政治家として“晴れ”をつかんだ。ご神木の御利益ですかね(笑)」
魑魅魍魎がうずまく「魔界」に進次郎氏がどう挑むのか。政治家としての手腕が試される。
(AERA編集部・上田耕司)
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